なっこ

花の都に虎(とら)われて~The Romance of Tiger and Rose~のなっこのレビュー・感想・評価

3.1
幼い頃すごく気に入った絵本があって、
それは、お城に住んでるお姫様が夜、壁に飾られてた絵の中に入っていく、という物語だった。
戻ってきて、あれは夢だったのかしら…と思うのだけれど、手元にはそちらの世界から持ち帰った何かを握っていて、夢ではないと気づく、そんなお話だった。
すごく好きだったのにどこにしまったのか、なくしてしまって今は誰が書いたお話なのかも分からない。
でも、未だに私はこの手のstoryが好きだという自覚がある。

どこか違う世界へと旅し、帰還する物語。
よくあるstoryの型だとは、思う。
むしろほとんどの小説は、その型で成り立っているのかもしれない。何か未知の体験をし、そこから何か得て、違う自分を発見していくことも、その型と同じだとも言えるから。

このドラマの面白いところは、入り込む世界が自身が設定したドラマの脚本の世界だというところ。
ドラマもシナリオを読むことも大好きな私にはたまらない設定。そんな世界を体験できるヒロインが心底羨ましい。
ヒロインはそれぞれのキャラクターを設定から把握しているし、物語展開の大筋も理解している。ただ、どうすればその世界から自分自身が抜け出せるのか分からない。とにかく、自分の思い描いていたラストシーンに漕ぎつければ元の世界へと帰れる扉が開かれるはずだと信じて、すぐに死ぬはずだった自らの配役を生かしてなんとか話の筋を進めていこうと奮闘する。

自分が生み出したキャラクターを目の前で見るってどんな気分だろう。初めは脚本家としての自分でいたはずなのに、だんだんとその世界の住人として生き始めるヒロインの変化が面白い。そしてそれぞれのキャラたちがちゃんと喜怒哀楽を持ち自由に自分の意思で動き始めていくようにも見えて、どんな結末に向かうのかヒロイン同様全く想像がつかなくて面白かった。
なっこ

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