胃潰瘍のサンタ

相棒 Season 6の胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

相棒 Season 6(2007年製作のドラマ)
3.7
マンネリとの戦いが始まったシーズン6。
前シーズンがお約束もストーリーもバッチリ決まった最初の到達点だっただけに、あの手この手で変化をもたらそうという意気込みは伝わってくる。劇場版もこのぐらいの時期。
特に、櫻井武晴がほぼメインライターの扱いになり、凄まじい情報量で展開される法廷劇をはじめ、社会派のシリーズとしてしっかり根を下ろそうという試みが見えて面白かった。
同じく戸田山雅司や岩下悠子、古沢良太といったシーズン5を支えた脚本家は一貫して面白い話を提供しており、盤石さを感じさせる。

……のだが、残念ながら新規投入脚本家がことごとく失敗してしまっている印象。特にベテランであるはずの吉本昌弘脚本は『裸婦は語る』『20世紀からの復讐』といずれも現時点でのワーストを軽く更新する勢いで崩壊or退屈な作品で、「当たり外れの激しいシーズンだったなあ」という感想はこれが故となっている。

以下、好きだったエピソードを順に。

1話『複眼の法廷』
もう石橋凌演じる三雲判事がカッコ良すぎる。信念のもとに人を裁き、裁判員制度を追い込むために右京との対峙すら厭わない
直球のハードボイルド。話も、ちょっと偶然に頼りすぎ感はあるけど面白かった。

8話『正義の翼』
岩下悠子脚本。これが初めて観た相棒だった気がする。社会派要素とクライシスサスペンス、それらを繋ぐ老人の苦しいばかりの「想い」。1時間ドラマに詰め込める要素は、大体ここに入っているんじゃないか。下手に大掛かりにしなかったことがより面白さに繋がった。

10話『寝台特急カシオペア殺人事件!』
これは嫌いな人いないよね。特急内の密室を使った王道フーダニットにクライシスサスペンス、しまいには社会派風ホワイダニットまで、破綻寸前のギリギリまでたっぷり詰め込んだサービス満点の大快作。エンタメ書かせたら天下一品、戸田山雅司脚本の粋が楽しめる。

17話『新・Wの悲喜劇』
このシーズンはこれ1本の輿水泰弘による怪作。発想だけ斬新なトリックと妙にコント臭い特命係のやり取り、中盤のどんでん返し(反則スレスレ)から更にどんでん返しを続ける奇抜さがラストまでニヒルな緊張をもたらす。実に面白かった。

最後に、やはり最終回『黙示録』が大変惜しかった。過去一多い情報量で面食らったが、実際やってることは単なる冤罪事件の再捜査だし、真相も意外と単純で拍子抜け。だが、ラストの名台詞「杉下の正義は暴走するよ」は、今後受け継がれるだけあり、杉下右京の選択と相まって鳥肌が立った。
でもな〜……三雲判事もっと見たかったなあ。