滝和也

相棒 Season 7の滝和也のレビュー・感想・評価

相棒 Season 7(2008年製作のドラマ)
4.8
初代相棒亀山薫
旅立ちの時…
杉下右京は一人、
正義の剣を振るう。
出会う人々を巻き込み
ながら…

そして二代目相棒神戸尊
が舞台に上がる…

「相棒 season7」

プレシーズンから相棒を勤めた亀山薫こと寺脇康文さんが9話を持って卒業。名コンビとなった杉下右京、亀山薫の特命係の物語は一旦終止符を打つ。しかし10話のスペシャルからも杉下右京の名推理は続く。そして最終話、杉下右京を監視するため、警察庁から神戸尊が送り込まれ、二代目相棒が誕生する。

それ故、ストーリーは通常の相棒に比べ、圧倒的にバリエーションに富んでおり、注目に値するシーズン。亀山薫の最後の活躍を描く前半部。一人となった杉下右京がどう動き、何をなすのかを実験的に描き、擬似的な相棒となるゲスト、サブキャラクターとの活躍を描く後半。そして注目の二代目相棒神戸尊との出会いを描く最終話。僕はこのシーズンが特殊故にかなり好きです(^^)

亀山薫の旅立ちのきっかけとなる、発展途上国サルウィンへの支援者である親友の殺人事件、「還流」二部作。日本のODAの体質に射し込みを入れる問題作でスタート。名物キャラであった瀬戸内元法務大臣役津川雅彦さんの名演が光ります。議員宿舎での爆殺と言う派手な事件「カナリアの沈黙」、大胆なトリック故に中々見破れない「隣室の女」、何よりも清水美砂と言う大好きな女優さんが出てる「顔のない女神」、そして友情が切ない「希望の終盤」この作品もかなり好きです。取調監督官と言う新制度を通して警察官と言う職務、警察と言う組織自体を問う問題作「最後の砦」はハードな展開が魅力でした。そして中盤の山、亀山薫最後の事件「レベル4」二部作。こちらはウィルパニックと言う大規模なギミックの面白さ、特命係の絆、信頼感を描いただけには留まらず、サブキャラ全ての魅力が描かれていました。何より伊丹と薫のコンビネーション、そして別れが素晴らしく、21の復活劇はさもありなんでした。

そして相棒なき杉下右京が走り出すスペシャル版「ノアの方舟」。田畑智子さんが初の女性相棒として活躍。再登場を願いたい方の一人です。そしてギミック、トリック、謎解きの全てがハイレベルで融合した神作「越境捜査」。相棒不在でありながら、僕が相棒の中でも最も好きな回。素晴らしいミステリーであり、気持ち良く騙された…と(笑)更に名作が続きます。犯人引き渡し条約の問題を突く「逃亡者」も社会派ながらもフーダニットとして面白く、興味深い回。コミカルさと鑑識米沢さんとのコンビが楽しめる「超能力少年」、当時相棒を演目にしたタカラヅカをモチーフにした「男装の麗人」、大女優岸恵子さんを迎えた水谷さんとの二人芝居がメインの「密愛」と硬軟織り交ぜた意欲作が続きます。映画ファンにはたまらない芹沢君相棒回「髪を切られた女」、詩壇の闇を暴くミステリー回「天才たちの最後」、定番陣川回のネットの悪意と言う新しい犯罪に挑む「悪意の証明」と次々に相棒を変えながら水谷豊演じる杉下右京の活躍が描かれ…。

そして最終話待望の二代目、神戸尊が察庁S、スパイとして初登場します。最初の出会いからけんもほろろと言う状況の中、任務遂行のため我慢する神戸尊。これは設定上無理なく入れました。またスパイがどう相棒になるのかと言う興味を引く最終話として見事。またこの話自体も杉下右京の正義を描くやるせなさを残す名作。事件は見過ごされても構わない様な小さなものに見えますが、罪は罪として見過ごさない右京さんのスタンスと誰も幸せにならないと考える神戸のスタンスの違いが明確で逆に次作に期待を残す感じも良かったですね。

この最終話ですが…前田吟さんが悲しき父親役…後のガリレオ2作目に先駆けて…出てます。またスペシャルには大門じゃなかった、渡哲也さん初登場。そして越境捜査での益岡徹さん。西沢利明さんや国広富之さん、秋野大作さん他味のあるベテラン勢が出演も多く、このシーズンかなり豪華な感じなんですよね。※寺脇康文さんのギャラが他に回ったかなと…(笑)

このシーズンはやはり、亀山薫から神戸尊へバトンタッチするために、相棒不在時を作り、前任の色を消して繋ぐシーズンだと思いますが…その合間の回がかなり面白く工夫されてますので、是非見てほしいですね。
滝和也

滝和也