滝和也

相棒 Season 12の滝和也のレビュー・感想・評価

相棒 Season 12(2013年製作のドラマ)
4.2
若き相棒を導く右京。
父との確執に悩みながらも
自身の正義に目覚め
成長して行く甲斐亨。

若き相棒甲斐亨こと
成宮寛貴を迎えた
セカンドシーズンにして
シリーズ第12弾。

「相棒 Season12」

三代目相棒成宮寛貴の甲斐亨編は、ラストの締め方、そして成宮寛貴本人の行く末を含めてやや人気が落ちると言うイメージです。また自分もその点があり、中々見返せなかったのも事実。ただ…今回その点を差し引いて見てみるとストーリーは中々、他に負けているものではありません。

特に…若き相棒を導く右京さんとは、擬似的な父子関係に見えますし、カイトくんの成長物語の要素、更に不仲の甲斐警察庁次長との確執と絆と言う今までの相棒にはない魅力もありました。このセカンドシーズンではカイトくんが明らかに成長し、やや成長物語の要素は薄まりましたが、時に見せる凄みが成宮寛貴の魅力を引き立てています。

各ストーリーの詳細は各話コメントに入れていますので、そちらをご覧下さい。このシーズンの魅力として特筆するならば…2時間スペシャル回がよく練れていて面白いという事でしょうか。甲斐峰秋警察庁次長誘拐略取と言う大事件「ピリーバー」からスタートし、中盤の甲斐亨が爆弾魔の脅迫から父親峰秋により指名手配犯にされる「ボマー」、対照的でかつ同位の意味を持つ悪の親子を描く最終話「プロテクト」とカイトくんのシリーズらしさである親子の絆、確執が含まれ、かつ大胆なサスペンスアクションとなる大掛かりなスペシャルが圧倒的面白さでした。

またミステリーのギミックで見せる回も比較的多いシーズンでもありますね。数学者のダイイングメッセージを意外な方が解読する「殺人の定理」、意図しない行為が犯人を隠す「別れのダンス」、右京さんの時計師が関わる「右京の腕時計」、カイトくんが自殺しようとする女と対峙する「崖っぷちの女」美容整形が関わる「顔」、ストーリー構成自体が変化球の「まちぼうけ」とギミックが楽しい回が目白押し。

無論、世相を切り取り、時には予言者ともなる相棒らしい回も巧み。前出の「ビリーバー」はニコ動の中の陰謀論、「原因菌」では一瞬パンデミックを予想させ、内実中小下請けの悲哀と食品偽装問題を。就活問題にメスをいれた「エントリーシート」、ネットの投稿による虚栄心が起こす事件「目撃証言」、ゴシップをストレートに批判する「見知らぬ共犯者」と中々に重いシリアス回も魅力。

ただ…印象に残るのは大女優ゲスト回、岩下志麻さんの「最後の淑女」、右京さんのモノローグがストーリーを紡ぐ「右京さんの友達」と言う異色回。演技力の高いゲスト二人が盛り上げます。コメディ回の定番である陣川回の「デイドリーム」もややシリアス、ヒッチコック的な巻きこまれ型「聞きすぎた男」ぐらいがコメディ回でこちらが少ないのも特長でしょうか。

穿った見方なのですが…ダークナイトに既になっているのは後付の事実ですが…「かもめの死んだ日」、「ヒーロー」とやるせないカイトくんの気持ちが出た後…カイトくんは変身したのではと思ってしまいますし、「ボマー」では右京さんとの活躍でセーフでしたが、後にそうなってしまう事を思うとやるせなくなります。またそれだけに次のシーズンが衝撃的で罪作りだった事が分かります…。
滝和也

滝和也