Tatsu

リーシーの物語のTatsuのレビュー・感想・評価

リーシーの物語(2021年製作のドラマ)
3.7
これは誰が救われる物語なのか考えてた。1人の悲劇的な過去を背負った作家が運命の女性と出会い、人生が救済される物語でもあると思うし、最愛の人を失った1人の人間が、最愛の人が敷いた物語によって救われる物語でもある。物語が必要である意味についての物語。キング自身も脚本に参加してるので、よほど小説に近いテイストなんだろうなということは読んでいなくとも想像できた。シャマランぽさもある。『レディ・イン・ザ・ウォーター』とか。役者の演技(サン・カンの無駄遣いはいただけない)、そして何よりもダリウス・コンジの撮影と、クラークの音響設計の技術的な達成は今年のドラマ作品の中でも3本の指に入るのでは。毎週このリッチな映像世界を体験できるだけで至福だった。構成自体はかなり歪で、例えば中盤、ボコボコに顔を殴られたジュリアン・ムーアがその夜過去を回想するというエピソードが2話に渡って描かれ、その間一切現在パートの物語が進まないという大胆な時間の使い方も。ただその歪さを妥協しなかったのはパブロ・ララインだからなのかなとも。特に最終話のSFチックな、あるいはロマンチックな時間編集も泣ける。その上で、不満を言わせてもらうのであれば、そうは言ってもやはり物語全体が作家の物語に集約されてしまった感があり、その点実質リーシーがどんな人物なのか、もう少し掘り下げてほしかった。『リーシーの物語』なんだから。
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