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いりびと-異邦人-のバナバナのレビュー・感想・評価

いりびと-異邦人-(2021年製作のドラマ)
4.2
原田マハ原作の『異邦人』のWOWOWでのドラマ化した作品。
原田マハさんの小説を全く読んだことはないんですが、マハさんが元々キュレーターをされていたそうで、京都を舞台に日本の美術界の話です。

主人公の菜穂はモネの睡蓮やゴッホなど、有名絵画を数多く所有する「有吉美術館」の副館長。
有吉美術館は美術収集家だった祖父の個人コレクションを展示している美術館。
今は祖父は亡くなり両親が継いでいるが、菜穂は絵画に鋭い審美眼を持っている。
今は「たかむら画廊」三代目の一輝と結婚しており、妊娠中で、母の勧めで京都に逗留している。
しかし、京都に慣れていない菜穂は、自分を異邦人に感じている。
そんな中、京都で訪れた画廊で、菜穂は小さな4号の『青葉』という絵に魅了され、その無名の新人の絵を大金を払って購入する。
この絵を描いたのは、日本画の大家・志村照山の弟子、白根樹という若い女性だった。彼女は17年前の事件のせいで、心意的に話すことができないのだった…。


冒頭シーンにより、白根樹が主人公なのかと思ったら、主人公は高畑充希さんが演じている菜穂でした。
菜穂の夫は東京の老舗の画廊経営者だが、実家の画廊が詐欺に遭ったり、最近は絵画を愛さない投資目的の客も増え、まず経営のことを考えねばならないので、
菜穂の芸術への審美眼とキュレーターとしての才覚は、夫をも嫉妬させる。
また白根樹の絵の実力は、師匠の志村照山を嫉妬させている…という二重構造。

最初は京都で自分を余所者だと感じていた菜穂だったが、彼女の鋭い感性は京都にどんどん味方を作っていくのに対して、
東京側は芸術よりも、お金のために動かなければいけないという世知辛さで対比されている。

演出的には、東京側は現代の普通のテンポで動いているのに対し、京都側は“間”を大事にし、静かなテンポで進んでいく。
だんだん菜穂が京都流の交渉術を身に着け、水面下で着実に樹のデビューを進めていくが、高畑充希の黒目がちの大きな瞳でじっと見つめられると、菜穂はまだ若いのに凄く説得力がある。
ただラスト近くになってくると、上流階級のコネクションという奥の手が炸裂しまくるのだがw。

後半になると菜穂の状況もどんどん変わっていくが、元々母親が菜穂を京都に追いやったのは、妊娠して段々お腹が大きくなっていく姿を嫉妬心で見たくなかったのかもしれないな、と思った。
樹と照山の関係は、原作ではもっとエグかったのかな?
照山の手の震えはアルコール依存症?
まあ酒に溺れる人は気が弱いっていうけど。

原作未読ですが、原作の世界を描くのに成功しているのではないかと思いました。
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