とむ

SHOGUN 将軍のとむのレビュー・感想・評価

SHOGUN 将軍(2024年製作のドラマ)
5.0
とんでもない傑作!
ほんとーーーに素晴らしいドラマだった!

第1話のラストに語られる「3つの心」の諺がこのドラマの一貫したテーマとなっており、真田広之演じる吉井虎永はそれを地で行く人物である。
心の奥底を視聴者にすら見せず、どこまでが謀なのか一切わからない。
本当に怖い人というのはこういう人のことをいうのだろう。
それを圧倒的貫禄で魅せる真田広之の凄みは言うまでもない。

このドラマで一番素晴らしいと思うのが、徹底した画面のデザインである。
外は常にシトシトと小雨が降っており、画面四隅はボヤけている。
それによりこの時代や舞台の閉塞感みたいなものを感じさせられる。
大金をかけた壮大な部分ももちろん素晴らしいが、そこだけに頼らない徹底したデザインがこのドラマの質を格段に上げているのだと思う。

物語においても、ヨーロッパでの宗教改革を背景に描くなど当時の世界の流れも視野に入れた時代劇って今まであったのだろうか?
時代劇に詳しくないのでわからないが個人的にはとても斬新に感じた。
イギリス人の安針の視点(現代日本人のマインドもどちらかというと安針側視点に近いと思う)も入ることにより、当時の日本描写が一種の作り込まれたファンタジー世界として見ることができ、それも海外で人気を得た理由の一つなのではないかなーと思う。
時代劇に馴染みのない海外の人にとってはDUNEとかにむしろ近いような気がする。

以下ネタバレあり

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これからは印象に残ったところなどをネタバレ関係なしに書き殴っていきたい。

・とにもかくにも文太郎!
あいつはクズだが、根は悪いやつ。でも嫌いにはなれない。
茶室で茶をたてたあと、鞠子殿にガチボコに振られる文太郎は本当に見てられなかった。
切なすぎ。。。
文太郎はそれ相応のことをやっており、同情の余地が一切ないことも切なさに拍車をかけており、胸が締め付けられる。
ただ、文太郎に対しては完璧に心をシャットアウトしていた鞠子殿があれだけ言ってくれただけでも感謝しろよお前!と文太郎には口酸っぱく言いたい。
そしてその文太郎が最終回で何も言わず綱を引く場面。
泣きました。
そしてそっと水を渡す安針も良い。。

・広松の切腹シーン
あの場面の緊迫感はすごかった!
広松と虎永の2人の緊迫感はもちろんのこと、それを見る央海の「これ流石に止めんとまずいだろ、、、」的な周りをソワソワと見渡す表情もあの場のヤバすぎる状況の緊迫感がビシビシとダイレクトに伝わってくる。
それにしても央海のキャラも良かった。
仕事のできる若者という感じだが、同年代である長門の死を人一倍悲しむ情に厚い部分もある。安針に対する接し方などは血気盛んなところもあり、お菊に対する感情も相まってグツグツと煮えたぎるものがあるという、複層的な人物描写が特に良かった。
そして、この広松の切腹シーンがあったことによって「このドラマはやる時はやりかねんぞ、、」と視聴者の脳裏に刷り込まれたうえでの鞠子殿の切腹未遂シーン。
あれは本当にビクビクした。
切腹のシーンで言うと、最終話の藪重の腰掛けたままの雑な切腹シーンも藪重らしさが出ていて良かった。

・最終回の構成の妙
関ヶ原の合戦でスペクタクルに終わるのかと思いきや、、
もしかしたら賛否両論あるのかもしれないが、個人的には圧倒的「賛」である。
勝利のための行動は既に終わっており、後の展開は虎永の頭の中で完結している、という虎永の段違いの策士っぷりが表現されているめちゃくちゃ素晴らしい最終回だった。
そして虎永の恐ろしさを身を持って痛感する。自作自演で村人を処罰させるというところはエグいこと考えるなぁとも思うし、同時に自分が天下を治めた後のことも考えてポルトガルの影響力を弱体化させる効果も狙ってるのかなと思うと、、、
あの落葉の方からの文を読んだ時が虎永の中では勝利が決まった瞬間であり、その時の虎永の表情も印象的である。
また、鞠子殿を失った安針が本当に胸を締め付けられる。思い出しただけで泣けてくる。
藤殿と安針の2人の小舟でのシーンは名場面である。
悲しさや寂しさから立ち直ろうとするラストが私は好きなんだなと確信した。(GofG vol3など)

・和歌の意味を理解できたらなぁ。。
今作和歌を詠むシーンが多いが、いかんせん私に教養がないため内容を理解しきれていない。
鞠子殿はどうやらフリースタイルで他を蹴散らしているようだが、詩の内容がわかってないので強さがわからなかった。
詩の内容が物語の大きな要素の一つとなっているため、教養のある方にぜひ教えていただきたい。

日本を舞台にしたハリウッド作品でとんでもない傑作にも関わらず、当の日本ではあまり話題になってないような気がして寂しいばかりではあるが、
みんなコナンばっかりもいいけどSHOGUN観ようよ、というのが最後に言いたかったことでありまする。
とむ

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