酔狂侍

SHOGUN 将軍の酔狂侍のレビュー・感想・評価

SHOGUN 将軍(2024年製作のドラマ)
4.8
いま全世界で、様々な記録を塗り替えてる配信時代劇「SHOGUN」を見たいがためだけに、Disney+を再契約した(笑)。
海外の批評家、メディアがこぞってあの「ゲーム・オブ・スローンズ」を超えたみたいなこと言ってるのを斜めに見て、「マジかよ?」と懐疑的に思っていたのも事実。
しかし、全話を鑑賞した今、結構な衝撃に包まれている。
「ああ、グローバルって、こう言うことか」と。
カナダのバンクーバーで撮影されたとは思えないレベルで、画面の中には日本の風景が広がっていたし、日本人の役者が大勢出て、すごいスケール感ながら、日本で制作されたかのような違和感のない時代劇を、日本語で演じている。
しかも、豊臣秀吉が亡くなった直後の権力争いに着想した、架空の歴史ドラマは、日本人の俺が見ていてもそこそこ難しい内容だったと思う。
それを日本の演技派たちが、古い黒沢映画を彷彿とさせる演技力で、静かな物腰の中に、怒りや熱を帯びてヒリヒリしちゃう命懸けの駆け引きを画面の中で展開させている。
こんな難しい内容に、吹替なしの字幕で、世界の視聴者が熱狂する時代が来たことに2話まで見たところで、まず驚愕した。
この海外ドラマで、完璧な日本の時代劇を目指そうと制作に力を注いだ真田広之のような創り手が居て、それを許すビジネス環境があり、いつの間にか、それを正面から受け止めて楽しめる市場が世界に出来ていた。
そんな条件が揃わないと決して、成功しようがないチャレンジャブルな大作が、突如、現れて大成功を収めたことになる。
またそれが、カネはあるけど、成功した作品の粗悪な続編を大量生産するだけで、自分たちは新しい価値の創造も、企画的冒険も、全くしなくなったディズニー本体ではなく、彼らが買収したFox系の会社によって実現したチャレンジだというところにも、なんだかニヤニヤしてしまう。
外国の視聴者視点で考えると、日本を舞台に、カトリックとプロテスタントが勢力争いしようとしている光景とか、日本人相手に、日本人には理解できない言葉で悪態つく主人公に面白さをきっと感じたんだろうし、物語の良さとして、日本に漂流したイギリス人が、徐々に武士の中に混じって、その価値観を知り、理解していく過程を共に歩むような展開は、すごく魅力的でユニークな体験だったのかもしれない。
美しい世界で繰り広げられる本音がわからないキャラクター達による血生臭いドラマで、異文化がぶつかり合いながら交流する物語でもある。
最終話の10話まで見終えて、
本当のグローバル化というのは、語られる内容が魅力的であれば、語る言語は関係なく、その内容に感嘆や共感が湧き起こり、異なる文化に対して敬意が払われる状態なんだろうなと、考えさせられた。

動画配信プラットホームの成長によって、原語での演技を字幕で楽しむスタイルは、世界で、ごく当たり前のものになった。

テクノロジーとコミュニケーションの進化は、語られる内容によって、その言語が何であろうとも、人のこころを動かせるような世界を作り出した。
コンテンツ業界にとどまらず、そのような社会の変化は、メチャメチャ大きなチャンスを生み出す可能性を秘めていると思う。
まさにいま、そういう扉が開こうとしているのを感じた。
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