実在した"海賊紳士"、スティード・ボネット。
夢を追い家庭から逃げ、貴族からヘッポコ海賊団の船長に転身した彼が、最凶の海賊と名高い"黒ひげ"に出会う…
そこから始まる、まさかのカルチャーギャップ×ブロマンス(ていうかBL)・コメディ!
スティードと黒ひげはお互いの世界に憧れていて、補完し合う中で相手の抱えた傷に気づき、最良の理解者となり、絆を深めていく。
豪傑に見えて実はナイーブな黒ひげことエドワード・ティーチを演じるのは、総指揮も担当するT・ワイティティ。
彼の映画作品と同じように、このシリーズもまた、過去のトラウマとその源泉たる悪しき父性へのアンチテーゼが船底に流れている。海賊という極端にマッチョでホモソーシャルな環境(しかし実は地上でも大きな違いはない)を舞台にして、《オトコらしさ》を広く皮肉っている構図だ。
「暴力より話を聞くこと」を説くスティード。そんな明らかに場違いでひ弱な彼を初めはバカにしていたガサツな船員たちが、後半になるとその教えを実践できるようになってたりして、笑えるしカワイすぎる。
個性豊かな船員たちのサイドストーリーも魅力的だし、ポップソングの引用の仕方も巧い。
一話30分未満×10話と気軽なドラマシリーズながら、ポップネスと批評性のバランスには『バービー』に匹敵するくらいの納得感があった。