こたつむり

アバランチのこたつむりのレビュー・感想・評価

アバランチ(2021年製作のドラマ)
3.0
飾り立てが上手いけど味は凡庸。
そんなギャップを感じる作品でした。オープニングとか格好良いんですけどね。物語前半の枠組みは『必殺仕事人』。目新しいようで古典なのです。

また、現実と虚構のラインもバラバラ。
重厚な味わいを出そうとしているのにスーパーハッカーが出てくるし、やたらと炎上しやすい昨今を反映しながらも「正義」を口にする単純さもあるし。隅々まで拘ったように見えません。

というか「正義」を語った時点でミステイク。
本作の根底には“自分の頭で考えること”というメッセージがありますが、それは「正義」と相反するもの。容易に「正義」を持ち出すのは危険なんですよね。

「自分で考える=自分の価値観を大切にする」

つまり、正しいとか正しくないとかの判断を“他人に押し付けた”時点で「正義」は「正義」じゃないんです。多数決は正しい、という愚かな判断に囚われちゃうのです。

だから、本作の趣旨を真正面から捉えるならば「この物語は危うい」とNGを出すのが「正解」と言えるのでしょう。勿論、物語の受け止め方に「正解」なんてないですからね。“趣旨に沿えば”という条件付きですよ。

なお、筆致はともかく演者は最高でした。
特に山中崇さんが演じる桐島は存在感ばっちり。渡部篤郎さんと並ぶと絶望的なまでに“強大”な雰囲気が醸し出され、主人公たちが立ち向かうに相応しい“敵役”だったと思います。

あと、高橋メアリージュンさんも良かったですね。昭和の価値観で言えば「女性=ヒロイン」なんですが、現代はジェンダーフリー。攻撃力を高める“戦士”役としてガンガンと闘っていました。というか、ヒロイン枠は福士蒼汰さんだった、という話も…もごもご。

まあ、そんなわけで。
外面は剛毅、内面は柔弱。
そんなギャップを是とするか非とするか。少なくとも“表層だけで判断する”のは本作の掲げた「正義」と相反するのは事実。きちんと“自分の頭で考える”ことが大切だと思います。

最近はネットの声が目立ちますからね。
旧態然としたメディアは“炎上”を取り上げますけど、世の中はそんなにシンプルではありません。“話題性”に振り回されても何も残らないのです。
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