木野エルゴ

イカゲームの木野エルゴのネタバレレビュー・内容・結末

イカゲーム(2021年製作のドラマ)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

無職、金なし、趣味はギャンブル、母親のスネを齧り、離婚した相手の元にいる自分の子供にプレゼントも買ってやれないソン・ギフン。そんなある日、スーツを着た男にメンコを挑まれる。勝てば大金が得られると言われ、訝しみながらも勝負を受ける。最初は負け続けてビンタを喰らいながらも最終的に多額の金を得たギフンは、男から大金を得るチャンスがあると名刺を渡される。そのゲームに参加することが何を意味するのか。何も知らないギフンは名刺の番号に電話をかけた…

命をかけた究極のゼロサムゲーム。
デスゲームというテーマはそれだけで観客の感情に強く訴えるが、それだけではただグロとナンセンスだけの陳腐な作品になってしまう。この作品は貧困に陥る前のプレイヤーの背景(老若男女、エリート、移民、脱北者、ギャング、医者、平均的な労働者)を描くことでどんな人間でも金で命をやり取りする状況に陥る可能性があることを示しつつ「どんな人間にも平等にチャンスを与える」というゲームの理念をあたかも救いのように錯覚させる。実際に消費者金融による多重債務問題が日本以上に顕著になっている韓国の世情と、子供の遊びというローカライズされたものでありながらどこの国にもある題材を織り交ぜたのは組み合わせの妙だと思う。

それぞれ独立したキャラクターがゲームを通して因縁づけられていく様子がとても良かった。群衆劇としてもクオリティが高い。そして全員が他人の死の直接的原因である以上、正義と悪という二項対立にならないという構図が面白かった。

ーーー以下ネタバレありーーー

前提条件として最終的に一人だけが生き残るというルールだったと思ってたんだけど違ったのか…6ゲームクリアしたら何人残っていようが賞金山分けで帰れるっていう話だったのかな。じゃないと一緒に生き残ろうって話にならないか。

部屋の壁にゲームの内容が描いてあるんだけど当然ながらプレイヤーの誰も気づいてない。はっきりその絵が映るのがファイナリスト3人になって以降のシーンだと思うんだけど。「ミッドサマー」も似たような事やってたな。

前半はそれぞれのキャラクターの特性をうまく活かせたストーリーだと思った。特に綱引きゲームの展開は胸熱だった。一見シンプルなパワーゲームに見える綱引きを、不利な主人公チームが戦略でジャイアントキリングする場面はスカッとした。このゲームでバラバラだったチームに連帯感が生まれ、次のビー玉遊びの悲劇に繋がる。個人的には001番のお爺さんとアリを推してたので6話は悲しかった。

個人的に不満だったのはVIPのシーン。VIPが居るという設定は必要だったとしても、あれは全部別の表現に差し替えたほうが良かった。それ以前の流れが良かっただけに、あれのせいで後半の勢いがなくなってしまったのが非常に残念。

それから第5ゲームの環境設定を途中で変更したことと、セビョクの怪我の原因が運営側にあるというのは運営側の落ち度であり、ゲーム本来の趣旨から外れていてフェアではない。第6話までの前半とそれ以降の脚本家は別ですか?っていうぐらい後半の出来が良くなかった。続編に続くような終わり方だったが、この作品に関してはこのストーリーで締めた方が良いと思う。このインパクトを超えるストーリーは難しいだろう。それでも続編が出れば見るけど。

ところで、フロントマンも大会の参加者だったってことはイ・ビョンホンがコン・ユにメンコで負けてビンタされてるシーンがあったってこと?なにそれめっちゃ見たい。
木野エルゴ

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