Eike

フォーティチュード/極寒の殺人鬼のEikeのレビュー・感想・評価

4.0
アメリカのドラマコンテンツの制作体系がTVだけでなくネット(HuluやNetflix)やそれ以外(Amazonなど)にも拡大し話題作を発信しておりますが、それに負けじとばかりに世界各国でもグローバル標準の作品が次々に登場してきております。

本作は英国の衛星放送TV局Skyによるオリジナルドラマシリーズの第一シーズン12話。
アメリカ型エンタティメントの影響は明らかですが設定とドラマのトーンに独自色が良く出ていて中々に新鮮な印象。
好き嫌いは分かれるでしょうが大人のためのジャンル系ドラマとしては十分に及第点でしょう。

舞台はノルウェーの北極圏にあるFORTITUDEという「町」。
地上最極北のコミュニティという設定で住人はわずか713人(プラス警察官4名)。
特別区扱いと言うことで世界各国の人々が集って暮らしております。
そんな”閉じた”コミュニティ内で残忍な殺人事件が発生。
その解明を進める内に次第に恐るべき事態が…。

本作の色を決定しているのは何と言っても舞台となる極北のコミュニティ。
ノルウェーの北極圏の「特別区」を舞台としていで特別な許可を得た各国の人材が集まっているという設定。
物語はこの地にリゾート施設を呼び込もうとするこの特別区の女性総督と彼女の右腕的存在となる警察署長の思惑と凍った大地に眠る地下資源開発を狙った動き、そして永久凍土の科学的調査研究といった動機で集った人々のドラマ。
ある日、凍土の中からマンモスの遺骸が掘り起こされそれを契機に奇妙な現象が起きはじめそして悲惨な事件が。
ドラマはこのミステリーと合わせてコミュニティのメンバーの人間ドラマも描いてゆきます。
極寒の世界の果てにやって来る人々はそれぞれに秘めた事情を抱えており一筋縄では行かない面々ばかり。
それもあって一見平穏なコミュニティには常に緊張感が漂っております。

本作、何といってもロケーションが超強力。
実際のロケはアイスランドで行われているのですが圧倒的に画面が白い(笑)。
屋外のシーンは常に雪と雪雲に覆われた灰色の空が画面の大半を占めており、見続けていると次第に遠近感が狂ってくる様な不安感が掻き立てられます。
巨大な氷河、凍てつく大地と海のスケール感も寒々として非現実感と隔絶感が強烈。
この孤立したコミュニティの設定は魅了的で実際にこうした場所で全編ロケしているのもすごいなぁと感心。
なにせこの町には飛行機か船でしか入ることができない(島ではないがあまりにも僻地で陸路が存在しない)のだ。
しかも人間の暮らすコミュニティを一歩外れれば、そこは住人を超える数の飢えた巨大な白熊たちが支配する世界。
斯様に見方を変えればこの町はそれ自体がある種の「牢獄」なのだ。
だとすればその中にいる人々はみな「罪人」なのか。

過剰に暴力的な作品ではありませんがそうしたシーンは結構シビアに描かれており、シリアスなアプローチもあってアダルト向けの作品であることは確か。
サスペンス、スリラーそしてホラーやSFの匂いもあって正に「大人のためのジャンル作品」というおいしいシリーズとなっております。

カギとなるキャラクターの配役もなかなかに渋い。
中でもコミュニティを仕切る「総督」に扮した Sofie Grabol(デンマーク人)、警察署長Richard Dormer(アイルランド)、ロンドン警察の警部Stanly Tucci(アメリカ)の3人は実力派揃いで彼らの緊張感漂う演技にはさすがに引き込まれます。
この第一シーズンではゲスト枠としてこちらもアイルランド出身、英国の重鎮マイケル・ガンボンが存在感を発揮しておられます。
ある種ジャンル系のドラマでありながらこうした演技派を揃えているおかげでドラマとしても見応えがあり、正に大人向けの本格ドラマシリーズと呼ぶにふさわしい印象の作品となっております。
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