りっく

ガンニバルのりっくのレビュー・感想・評価

ガンニバル(2022年製作のドラマ)
4.5
限界集落の世襲や利権を中心に確固たるパワーバランスが形成され、それに抗い脅威とみなされた者は裏切り者として排除される究極の同調圧力と疑心暗鬼が充満する息苦しさを最後まで持続させる力量が素晴らしい。

特に70年代の日本映画のお家芸だった閉鎖的なムラ社会の闇に加え、禍々しい民間信仰や伝承を混ぜ合わせてみせる。ある種の底知れぬ異世界が口を広げ、その沼にズブズブと嵌っていく恐怖と好奇の物語世界を構築し、その病んだシステムの全貌が徐々に明らかになる様はスリリングだ。

そこで描かれるのは、思考を停止させ、伝統という都合のいい言葉を盾に悪しきシステムが稼働し続ける世界で、こどもの国未来のために、次世代が声を上げて運命を切り拓くことができるかという自問自答の問いかけだ。だからこそ、本作は現代的で普遍性のあるメッセージを発信している。

結束した後藤家のキャラクターは強烈だが、中村梅雀率いる村人たちもまたムラ社会の嫌な部分を凝縮させたような存在かつ、柳楽優弥も初期北野武作品における暴力警官を彷彿とさせる目つきと危うさがありそれぞれが見事。

二項対立的な図式に逃げるのではなく、善悪という尺度が崩れ去り、自分の信念だけを進むしかない状況に置かれた各々がどのように判断を下すかという極限の選択に思わず息を呑む。
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