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恋せぬふたりのtubameのレビュー・感想・評価

恋せぬふたり(2022年製作のドラマ)
4.2
他者に恋愛感情を持たないアロマンティック・アセクシャルの男女が、共同生活を通して家族を目指す日常を描いたドラマ。


個人の価値観を尊重しようという風潮になっても、恋愛をしない人々に対してネガティブなワードで語られることがまだまだある世の中。非常にエポックメイキングな作品だ。


とても配慮して作られたドラマという印象で、咲子は人懐っこいタイプ、羽は他人との接触がかなり苦手とスタンスが真逆の二人を主人公に設定し、固定イメージが付くことを避けている。
性的接触のあるエピソードの冒頭で警告テロップが出たのも画期的だった(直接的な演出はなかったが)。
序盤は周囲の無理解など観ていて辛い場面もあったが、これも当事者の気持ちを追体験して欲しいとの想いからと思う。丹念な取材の上制作されたことは、毎回放送後に発表されるスタッフブログでも感じられた。



ノスタルジックな一軒家を舞台に、互いの価値観を尊重しながら、距離感を保って信頼関係を積み重ね、日々の些細な喜びを共有する二人がとても微笑ましく、その適温の関係性に癒された。二人が食卓を囲むシーンがいい。
アロマ・アセクの人々以外の苦悩も描かれており、他者への思い遣りの大切さを説きながら、新しい家族の形を問いかけるストーリーは観ていて考えさせられることが多かった。好きなのは中盤から登場したカズとのエピソード。ある意味本作のMVPかもしれない。



最終回は優等生的でもあったけれど、家に縛られていた羽の変化は感動的だったし、自分が思う幸せを一番に大切にしようとする咲子の宣言は力強かった。
救われるとかそういう気持ちになるまではいかなかったが、誰の心にも少なからず存在するであろう生きづらさに光が差し込むような幕切れは良かった。
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