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正体のheroheroのネタバレレビュー・内容・結末

正体(2022年製作のドラマ)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

認知症は、ショックとなる特別な出来事や、住む場所が変わるなどの環境の変化によって急速に進行する。
本作に登場する黒木瞳演じる由子も、事件前から発症していたとするなら、事件のショックやその後の施設への入所によって急激に症状が進行するはずで、主人公の慶一が逮捕され死刑判決が下るまでの期間と、その後の逃走期間の1年半によって、彼女の記憶はさらにあやふやになってなくてはならない。
しかし、認知症は脳の発症部位によって症状も全く異なり、幻覚を見る者もいれば、例えば海馬の萎縮によっての認知症だと、直前のことは忘れても、以前のことはしっかり覚えていて、特段怒りやすくなる事もなく普通に会話できたりする。
本作の由子がどのようなアルツハイマー型なのかは詳しく語られていないので、「症状が進行してないのは変だ」と突っ込んでしまうのは野暮なのかもしれない。
物語自体はとても良く練られており、居場所が変わる度の各エピソードによって、視聴者は主人公をどんどん応援したくなってくる。
ただ、ラストの裁判エピソードが余りにも突然に完結するので、少々面食らってしまった。
とは言え、本作は主人公の生き様を見せるのが本筋であり、再審が始まってからは、彼ではなく周囲の人間の物語となるので、潔く省略したのもドラマの創り手の手法としては間違ってるとは言い切れない。
とにかく全4話構成で短く、それなりに満足感の得られるドラマと言える。
鑑賞後、原作のラストを知ったのだが悲しすぎて、救いのあるドラマ版の方が好みだ。
ところで主演の亀梨和也のような顔だと、とても特徴があり印象深いので、長期間の逃走は無理だろうなと感じた。
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