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サンドマンのpenのレビュー・感想・評価

サンドマン(2022年製作のドラマ)
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夢の世界を司る王ことドリーム、またはサンドマン、モルフェウスの冒険を描くドラマシリーズ。モルフェウスはある出来事を境に夢の世界を長く離れてしまい、戻ってきた時には自らが作り出した夢の世界の王国は荒廃し、所有していた三種の魔具も奪われて力を失ってしまった。それらを取り戻すまでのエピソード、モルフェウスが創造した擬人化した事象たちとの戦い、夢の世界と現実世界の境を曖昧にする"夢の渦"に関する物語が描かれ、その裏で蠢く思惑が次第に顕になっていく。

擬人化した事象たちはすべて王たるモルフェウスに作られたのだが、だからといって彼に忠実な下僕という訳ではない。作られたもの達も願いを抱いており、それらがこの物語の行方を左右する。王国を長く離れる前のモルフェウスならば冷酷にその者たちを対処していたであろうことが、話数を重ねていくうちに見え始める。しかし現在の彼は昔とは異なっていて、一見クールに振る舞うが、その中には優しさが芽生え始めてきているのが伝わる。それはモルフェウス役を演じた役者が時折見せる、微かな微笑みの表情が大きいだろう。本作は精神的に傷ついたモルフェウスの心の修復と成長を描く物語でもあるかもしれない。

擬人化した事象や、地獄で生きる存在が見せるのは、決して手に入らないものに手を伸ばしてしまった姿だ。それは手に入れたように見えて泡沫の夢であり、だからこそ哀しい。
また、モルフェウスの魔具を手に入れたことによって人間の精神のベールを剥ぎ取ろうとする人が登場するのだが、その人が中心となる5話の緊張感は凄まじい。かと思えば次の6話には壮大な時間の中で光る人の本質的な善性が描かれ、人間の多面性を見せる構成になっていたように思う。前半は一話完結型に近い形になっていて、それぞれのエピソードの完成度が高かった。

原作のコミックの構図を再現したのだろうか、一つ一つの画面構成に美意識を感じるほど、撮影が良かった。特に3話は雨と夜のシーンが印象深いのだが、どの場面も美しかった。

シーズン2はまだ未定のことだが、このクオリティが続けられるのであれば、是非とも続きを作って欲しい。
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