HicK

ムーンナイトのHicKのレビュー・感想・評価

ムーンナイト(2022年製作のドラマ)
4.0
《カタルシスの塊。己との戦い》

【ガッチリ掴まれた1話目】
アクションを見せない事が逆に楽しかった。意識が戻るたびに悲惨な状況になっていくのが面白い。ミステリアスさもあれば、結果だけ見せる手法は(ジャンルは違えど)映画「ハングオーバー」のような楽しさにも近い。状況の変化によって語られるストーリーテリングに1話目から引き込まれた。

【今作の醍醐味:サイコスリラー】
3話から主人公交代が始まり、スティーヴン目線で進んでいった物語がガラッと変化する。一体誰に自分は視点を合わせればいいのかと先が見えない嬉しい衝撃。そしてなにより5話の破壊力。正直、それまでのアメミットの墓を追うアドベンチャー要素は自分にはどうでもよく、5話のポップなサイコスリラー展開こそ今作の醍醐味だった。ひとつひとつ、過去の部屋の扉を開けていき、閉ざしていた記憶と向き合っていくという直接的な表現も分かりやすい。

【カタルシスの塊】
その"ポップなサイコスリラー"では自分を受け入れられるか、認められるかというテーマに。過ちや後悔と向かい合い過去を清算し、肯定ができる状態になって初めてフルパフォーマンスを発揮できるという現実でも共通する心理テーマだった。1話目から反発し合う彼らがお互いの必要性を感じ、認め合い、決戦に挑む姿は最高のカタルシスだった。

【演技】
ブリティッシュ、アメリカンアクセントや性格で演じ分けていたオスカー・アイザックの演技が秀逸。切り替わる瞬間は映画「スプリット」でジェームズ・マカヴォイを見た時の"幸福感"が蘇ってきた。また、レイラ役の女優さんもカッコよく、「エジプトのスーパーヒーローなの?」というやりとりの際にはヒーローとして神々しく見えた。

【総括】
大胆な演出に序盤から引き込まれ、奇抜な設定に反し普遍的でもある心理要素に惹かれた。まさに「敵は己の中にいる」といった展開で、対ヴィラン以上に自分自身との戦いで勝利を掴んだというカタルシスたっぷりの物語だった。自分の中では「ワンダヴィジョン」に次ぐMCUドラマの傑作に感じる。

スーツくん好きだなぁ 笑。
デッドプールみたいなキャラにしていくのかな?
HicK

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