無差別イイネは咒殺

ミズ・マーベルの無差別イイネは咒殺のレビュー・感想・評価

ミズ・マーベル(2022年製作のドラマ)
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イスラム教徒のヒーロー、ましてや女子ヒーロー自体あまりなかったように思うので、企画は素晴らしい。どんどんやって欲しい。笑顔が素敵で、彼女をもっと見たいと思う。
しかしやはりちょっと脚本が突貫工事気味なのでは。せっかくいい題材なのに、工業化製品のようで勿体ない。

普段、作品の感想であまり苦言は呈したくないと思ってる。チキンというのが最大の理由だが、どんな作品でも誰かにとって特別な出会いになる可能性があるから、見る気がなくなるようなことはあまり書きたくないのだ。ただ、この作品はやはり手放しで賞賛出来なかった。素直な感想を書こうと思う。

シーハルク以前のMCUドラマ全般に言える事なのだが、結局映画に比べたらかなり低予算の企画──しかも一本の映画として成立する内容を、無理矢理6時間くらいに引き伸ばしているように感じてしまう。みんな映画の密度に慣れているから、物語のテンポがどうしても遅く感じてしまうと思う。

MCUが凄いのはキャラのファンで無くても、単純なヒーロー活劇として楽しめるのは大前提に、ユニバース展開やポリティカルサスペンス、懐メロコメディなど多様な引き出しで楽しませてくれる。しかし正直ドラマはキャラのファンやシリーズ全体を追ってる人でないと付いていけないんじゃないかと思う。

今回も正直、ダラダラやるけれど、2時間の映画と比較してより深く人間ドラマを描いている訳でもない。物語に、ドラマの尺である必然性が感じられない。最後に大盛り上がりする訳でもない。主人公のアベンジャーズオタクの設定も最初だけで全然生かされてないし、ヴィランも存在感に欠ける。

何よりいくらヒーローとはいえ娘に警官が発砲してたら親は死ぬ気で止めるだろ。なのに心配そうに見守ってるだけのシーンとか、段々そういうのが全部気になるようになってきてしまう。世界一のドル箱シリーズだから手を抜いてもPV稼げるんだろうけれど、ユニバースの一作として作るならちゃんと作れよ。

冒頭に戻るが、イスラム教徒で女子のヒーローという、これまでとは違う新しいヒーロー像を打ち出した画期的な一作なのに、こういう作りになってしまったのが残念でならない。期待してる自分が悪いのか?
作りが雑なのに「こういう展開すればウケるだろ」みたいな機械的な展開だけ目立って哀しい。