ナーオー

ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~ シーズン1のナーオーのレビュー・感想・評価

5.0
こそこそ『ジャック・リーチャー』だ!

原作ファンとしては、トム・クルーズ主演で映画化されてしまった『アウトロー』とその続編の『ネバー・ゴー・バック』は本当にガッカリでした。

何がダメだったかと言うと、
シンプルにトムがジャックに見えないことです。2メートル近い巨漢で周囲が怖気づいてしまうような威圧感があるジャック・リーチャーというキャラクターを小柄なトム・クルーズが演じたことによって、最大級の"コレジャナイ感"が出てしまい、『アウトロー』ではリーチャーよりもロザムンド・パイクの方が背が高くて失笑、『ネバー・ゴー・バック」に至っては、この映画がジャック・リーチャーである必要性が感じられませんでした。

それに対して原作者リー・チャイルドお墨付きで、事実上の仕切り直しとなる今回のドラマ版は、バイオレンスにセックスなど原作の持つ野蛮な世界を再現出来ていたと思います。今回、脚本と製作総指揮を担当するニック・サントラ。調べたところ『パニッシャー ウォーゾーン』の脚本家の一人だそうです。『パニッシャー ウォーゾーン』も原作のダークなタッチを忠実に再現していた映画でしたが、今回のドラマもそれを見込んでの起用なのかも。

そして、リーチャーを演じるアラン・リッチソン。原作のリーチャーは2メートルの巨漢男です。これを満たす俳優は限られると思いますが、今回のアラン・リッチソンは原作のリーチャー像にとても近いキャスティングでした。まだまだ知名度はない俳優で僕も今まで知らなかったですが、映画ほど有名スターが必要とされないテレビドラマだからこそ、今回の配役は見事でした。

また、アラン・リッチソンの大きい体を活かしたファイトスタイルも見所です。トム・クルーズの映画版はスペインの格闘術であるキーシ・ファイティング・メソッドという肘や膝を使ったスマートな戦い方でしたが、今回はもっと荒っぽい戦い方。相手を殴り、蹴り、ブッ飛ばす。ジョン・バーンサルの『パニッシャー』のように泥臭い格闘でした。

そして今回、監督の一人としてM. J.バセットが参加しています。この監督は去年僕が観た映画のワースト10に入る『ローグ』という映画の監督さんです。他にも『サイレントヒル リベレーション』や『インサイド・マン2』など色々アレな映画をいくつも手掛けている人。一方で、『ストライクバック』や『オルタード・カーボン』、『死霊のはらわた リターンズ』などドラマシリーズの監督です。

THE B級職人監督って感じの人で、映画のときはアクションやサスペンス、人間ドラマにしてもアレなところが目立ったけど、ドラマのときは本来の持ち味が発揮されていると思います。特に『死霊のはらわた リターンズ』などエクストリームなアクションシーンの演出はなかなか良い。テレビドラマ向きの人なのかも。
またこのバセット監督、火の演出も良い。
映画の出来はともかく『サイレントヒル』や『ローグ』、そして今回の最終話でもオレンジ色の炎を迫力たっぷりに表現しており、色彩感覚が優れてると思いました。

あと今回も『アウトロー』、『ネバー・ゴー・バック』に引き続き、原作者リー・チャイルドがあるシーンでカメオ出演しています。MCUでスタン・リーがカメオ出演しているところを見つけたときみたいに、嬉しかったです。

この調子で『61時間』もドラマ化してほしい。シリーズ化希望〜!!!!!
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