Kz氏

舞妓さんちのまかないさんのKz氏のレビュー・感想・評価

舞妓さんちのまかないさん(2022年製作のドラマ)
4.0
NHK朝の連続テレビ小説になりそうなテイストだけど、劇中娘を引き取りに来た父親が毒づくように、「水商売」の話だからそうはならないと思う。
ここでいう「水商売」は、「接待を伴う飲食業」のことで、この夜業は、料理屋・芸者置屋・待合の三業をコンパクトにまとめたものだろう。京都の花街はその粋で、舞妓(半玉)は京都の象徴になっている。

現実には最近人権侵害の告発もあったけれど、伝統と格式のしとねの上で、このドラマの少女たちは、中学か高校の部活合宿を過ごしているようにさえ見える。
それは、芸を極めることが、舞妓芸妓の存在理由だからだろう。

もはや絶滅危惧種の幇間は、芸人の始祖だろうし、その太鼓持ちがよく出てくる落語は、噺家が料理茶屋などに呼ばれたのが始まりだ。つまり、芸能はいきなり舞台の上で始まったものではなく、座敷がそのルーツでもあるのだ。
舞妓芸妓の始まりは、東山周辺の水茶屋の茶立女が、歌舞伎を真似て三味線や舞踊を客に披露していたことだという。彼女らは、芸能の根源を今なお実現しているのだとも言える。
舞妓ファンで生写真を撮りまくっているカメラマンが出てくるけれど、屋形(置屋)のシステムは、何となく、アイドルグループをプロデュースしている秋元康を思わせる。

「水商売」でつながる、夜業と芸能の親近性を思わされたのだけど、何本か監督もしている是枝裕和が、屋形の世界に関心を持ったのは、その疑似家族性だろう。何故監督は「血のつながりではない家族」にこだわるのだろうか。「公権力とは潔く距離を保つ」という姿勢と、何か関係がありそうに思うのだけど。
これは、次の宿題。
Kz氏

Kz氏