デパルマ

17才の帝国のデパルマのレビュー・感想・評価

17才の帝国(2022年製作のドラマ)
3.5
今期ドラマの隠れた傑作。AIと民間人の若者が実験都市計画ウーアに参加する近未来SF。プロデューサーは「カルテット」「大豆田とわ子」の佐野亜裕美、脚本は吉田玲子、音楽は米津玄師の編曲でおなじみ坂東祐大という凄すぎる面々。プロダクションデザイン(超カッコいい!)を担当された服部竜馬さんは、劇中の政治の透明性を重んじる主人公に倣って批判や批評を受け入れるべくtwitterを実名アカウントに変更したという気合の入りよう。第1話で、彼らは徹底的な透明性を確保したうえで市議会を廃止してネットで直接世論調査しようとするんだけど、すごくオードリー・タンみを感じた。それに最近の河合優実のどこにでも出てる感すごいし、なんと同性のパートナーらしき人がいることがさりげなく描かれているではないか。首相が「我が内閣も、ご覧のように高齢者ばかりですな」と自虐的に話すと記者たちに笑いが起きる。しかし松本まりかは厳しい表情を崩さない。森喜朗の女性蔑視発言で笑いが起こったあのことが思い出された。第2話は、都市再開発の是非を問うディスカッション。重要なのは、具体的で建設的な意思決定のプロセスの見える化。なるほどクリーンな政治は最短距離で社会をよくできるし、立場を気にしたり根回しや筋を通した時点で透明性は失われるということか。第3話で、染谷将太の「批判だけだったら誰にでも出来る」はよく与党が言う「野党は批判ばかり」と呼応する仕組み。最終回の街頭インタビューに出演しているのは声優の緒方賢一。17歳の頃の純粋で鬱屈した、理想主義的な青い気持ちこそ、社会を変える原動力になるのではないか。経験のなさは、AIでカバーする。ドラマはそういう結論に落ち着いた。若者の社会への不信感やモヤモヤを肯定した上で、じゃあ闘おう!と背中を押すんだけど、なんか釈然としない。宙ぶらりんで終わった感じ。明らかにモリカケをモデルにした事件もふわっと終わってしまった。それぞれの理想を描くのは素晴らしいけど、最終的に精神論に着地してしまって具体的な未来像や手続きがあいまいに誤魔化された感じがして、モヤモヤする。しょうがないのかもしれないけど、議会をなくしたり再開発の具体的なディスカッションをしたりしていた前半に対してどんどんお話が気持ちの問題になっていったのが嫌だった。もっとたとえば、青波市を代々支配してきた鷲田一族が今まで政治と癒着して地元のバスとか学校とか新聞社を支配している(つまり世論に影響力がある)という最早日本の縮図のような設定をもう少し深掘りするとか、もっと“具体的に”選挙制度について議論する/型破りなアイデアを出すとか(たとえば未成年の選挙権、親は子供の数だけ選挙権を持つとか、ネット選挙、政策をいいねの数制にする、首相を直接選べるとか)が必要だったと思う。まあ最近若者の政治参加についての番組を作ったり、色々苦心しているNHKが、民放のドラマプロデューサーや大ヒットアニメの脚本家などと組んで若者に新しい物語を伝えようととしている心意気は十分に伝わった。肩持つ訳じゃないけど、少なくとも他の局はこれ出来ないと思った。というかアニメ化するべき。これ好きな人は「2034今そこにある未来」オススメだよ。イギリスを舞台にしたハードな近未来予想ドラマだよ。
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