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ハピネス -守りたいもの-のsoopenのレビュー・感想・評価

ハピネス -守りたいもの-(2021年製作のドラマ)
3.9
コロナ禍真っ只中に、よくこんな感染症パンデミック作品を作れたな、と思いながらも、ゾンビより救いのある話で、しっかり楽しみました。

ある薬を服用すると、渇きを感じ、人の生き血を欲する襲人病を発症し、理性を失い白目を剥き、誰彼構わず噛み付き、仲間を増やしていく。そんな感染症が韓国中で爆発的に広がり始め、政府は封鎖政策を取る。あるマンション群に閉じ込められた人々の数日間の戦いが本作の全て。

襲人病は、ゾンビとは違い、ルールが存在する。10〜15分経てば正気に戻り、また血を見たり、渇きを癒そうと水を飲めば、襲人衝動に駆られるというものだ。衝動に抗って耐え続けることも出来る。稀に引っ掻かれた適度では、発症しない者もいる。つまり感染しても、発病したかどうかの区別がつきにくい。

警察特攻隊のユンセボム(ハンヒョジュ)と、所轄刑事のチョンイヒョン(パクヒョンシク)は、このマンションに住む新婚夫婦。感染症にパニックになる住人らのリーダーとなり、秩序を回復させようと奮闘するも、殺人事件は起こるし、誰も彼もが保身に走り、生き残る為なら、邪魔な人間を殺してもいい、とまで考え出す始末。備蓄の奪い合いは醜いほどで、そんな時には格差社会なんて関係ない、と思いきや、上階に住む人間にだけ与えられている特権(マンション内のジムを使える等)を、非常時にすら訴える。立場の弱い老夫婦、マンションの掃除中に閉じ込められた夫婦、不倫カップルと男の妻、働かない弁護士、マンション住人の頂点に立とうとする会長と呼ばれる女、金持ちの息子、謎のマスクマン…一触即発の状態の中、防いだはずの感染はどんどん広がり、ついには警察官まで…

このドラマは、生きている人間ほど醜い生き物はないよね、という話です。いかに醜いかの例をふんだんに見せつけながら、対比で輝く主人公2人の屈しない正義感と思いやり、分け隔てなく与えられる優しさに涙する展開は、パニックホラーとしてさすがだなと思いました。ワクチンを作ろうとする外での戦いも同時進行で、コロナの激しい時期に作られた作品だけに、変にリアルでした。

ゾンビは噛まれたら確実に感染し、人間に戻ることはないけれど、この病気は衝動が治ると人間性を取り戻す、というのが救いでもあり、厄介でもあり…人間に戻った感染者をどこまで受け入れられるのか?というのもまたコロナとの繋がりを深く感じた所です。特に初期のコロナでは差別問題が酷かったし…

ハンヒョジュとパクヒョンシクは、どちらもキレのいいアクションと、守る側の人間のカッコ良さを見せつけてくれましたが、その為にどれだけ鍛えたのか…ヒョンシクはヒョロヒョロなイメージだったのに、筋肉増量で伸びのある美声で頼り甲斐のある男に成長していました!カッコいい同士の2人の恋愛は、グズグズ進みが遅かったけど、最後まで素敵でした。

惜しかったのは、ラストが詰め込み過ぎて時間が足りなかったのか、かなり雑に思えたこと!TV録画だからカットされたのかも知れませんが、収束していく段階の余韻が欲しかったです。
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