主人公は佐伯に、自身の仄暗さと
共鳴する部分を見出していたんだろうな。
それゆえ、自分のものだと認めたくない
希死念慮や暗部を彼に投影してた。
なぜって、それは佐伯のゴッホの話に
帰結するんだと思う。
【病んだゴッホを、健康的で
生きる力があるゴッホが殺す。
真っ当に皆と同じように生きたいから。
自分の狂気に振り回されたくないから】。
競争、格差、貧困…
そんな社会性とは切り離されて、
個人には幸せであれ、前向きであれ、
が課される。
そうして、自分の疲弊や病みを
見つめられなくなっていく。
死にたい、と思う気持ちに
めちゃくちゃ丁寧に向き合い、
肯定し、許す作品だった。
幸せや前向きであることを
正義とする風潮は、
希死念慮に罪悪感を植え付けて
"思ってはいけないもの"にするけど
主人公の出した"自身の仄暗さを
消すのではなく見守る"って結論が
全てだと思った
ファンタジックな設定
×サスペンスの導線で、
謎多く始まる奇妙な入り口だったけど
その謎を解き明かそうとする過程で
炙り出されていく、誰かを簡単に
ふるい落とし、孤独にする社会性や
人間の複合的な内面。
ヒューマンドラマのように
終わるとんでもないドラマだった。