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この世界の片隅にのmoeのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2018年製作のドラマ)
3.9
映画も好きでしたが、ドラマ版もとても丁寧な作りで好きでした。キャストの皆さんがどの役もぴったりはまっていて。安定の松坂桃李に尾野真千子、オリジナルキャラクターの伊藤沙莉や土村芳、男前な村上虹郎、そんな中でおどおどしつつバツグンの存在感だった松本穂香。この作品は、とにかくすずさんの魅力なしには語れないと思います。

賛否両論だった現代パートは、確かに演技のテンポ等、う〜んっていう場面もありました。でも、私自身最近広島へ行ったからか、広島出身の親しい友人がいるからか、この物語を他人事で終わらせるのが悔しいという思いがあって。原爆を落とされたという気持ちも、そこからの復興の歴史も、この物語にはこんなに共感して感動できるのに、実感として何も理解できていない悔しさというか。そんなものを少しでも発散させてくれる存在として、榮倉奈々の白々しいくらいの部外者感に逆に救われたように感じました。

ラストにカープが出てきたのも良かったです。重松清さんの「1975」というカープ初優勝を描いた作品を読んだことがあるのですが、原爆投下から30年後の初優勝まで、復興の歴史はカープと共にあって、それが人々の希望になっていたと。こう言葉にすると簡単ですが、広島県民の方々がカープを応援するのは私たちがただスポーツを応援する以上の意味があるんだろうなって。真っ赤に染まる広島駅前、他県にはカープ教だと揶揄されるくらい、そんな熱烈な思いを抱かずにはいられない、そんな歴史の重みやすずさんの気持ちがラストシーンに繋がっているような気がしました。

こんなに優しくしたたかな物語を生み出していただいたことに、心から感謝したくなる。そんな作品です。
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