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LIAR GAME シーズン1のshishiraizouのレビュー・感想・評価

LIAR GAME シーズン1(2007年製作のドラマ)
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ドラマ版『ライアーゲーム』にあった魅力は、ケレンたっぷりの演出ぶり、ゲーム状況の展開の面白さ、中田“perfume”ヤスタカの音楽だけでは語れない、どこか淫猥な感触があるように感じられます。それは触覚的なSM的風土かと。
何度となく騙され、ダマされ、裏切られ、そのたびにバカだマヌケだと嘲笑され、高笑いという名の罵声を浴びつづける神崎ナオ/戸田恵梨香の、困って潤んだ瞳、うっすらと開いた唇、泳ぎ、うつむく視線。その被虐者ぶりの、圧倒的な魅力。フクナガユウジ(鈴木浩介!)を筆頭に、彼女をじっとりといたぶる面々の淫猥な声音や素振り。ゲーム状況の進展を一歩一歩、心理から身振りからを着実に追うように描かれるゲームの機微が、いつしか妖しげな淫靡さをまとってゆく。その中心にあるのは勿論、神崎ナオ/戸田恵梨香の生々しい存在感であり、(極私的な人生訓に律された結果)禁欲的に振る舞わざるをえない秋山シンイチ/松田翔太から匂う青々としたフェロモンがジンワリとそれを包みこむ。味気ないプロット/物語が、現実の身体をもつ俳優たちの肉体に託されると、想定外なほどの別種の艶やかさを放ちはじめる。

ただし、ここでの戸田恵梨香の魅力は、女優・戸田恵梨香の魅力が現在キテルといった類いのものではなくて、神崎ナオ=戸田恵梨香という存在の被虐的ポジションによるもの。近作の、『奇跡の動物園2007』(前作に及ばす)や『牛に願いを。』(この題材でこのキャストで、これだけしょーもないものが出来るのはある意味奇跡的)での戸田さんは全然ダメでした。
スレンダーで黒く長い髪に、あの容姿。しかしそのソツの無い構成要素のなか、どこかしら漂う、暗く濁ったモノ。それをここではとりあえず“暗黒性”とでも呼びますが、その暗さ、邪悪な深遠さこそ彼女独特の真髄。その“暗黒性”を、『野ブタ。をプロデュース』や『花より男子2』での彼女は、体内に宿して不気味さを発散させたし、『デスノート The Last Name』や『ライアーゲーム』では自分を取りまく世界に“暗黒性”を転嫁し、自分は邪悪な精神や力に虐げられつづけながらも純真に信じつづけるM的存在として妖しく輝く。
“暗黒性”をその存在の内側に置くか外側に置くかで様相は異なるものの、暗黒性を配置してゆくことにより自身の女優的存在感を際立たせてゆく戸田恵梨香の邪悪さと魅力は、世界に思いっきり転嫁した(世界の構成要素を全て邪悪な色に染め上げ、自身に世界を司るほどの純真さを付与した)『ライアーゲーム』で最大級に発揮されていました。

2007.11
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