みち

光る君へのみちのネタバレレビュー・内容・結末

光る君へ(2024年製作のドラマ)
-

このレビューはネタバレを含みます

1
陰陽寮から始まる雰囲気ばっちりな新大河。

子役・落井実結子の目が印象的。

右大臣となる藤原兼家の敏腕ぶり、息子たちを含めた人間を駒として正確に把握しているところ、今回で一番存在感があったのでは。道隆の幸薄そうな匂い、道兼の愛情不足な目の揺らぎ、軽々と振る舞っていてその実もっともひとの心に気を配る三郎(道長)、キャラクターが力強くわかりやすく、三郎なぞ、どこから見つけてきたのか。

宮中の噂話も、安っぽくない演出になっている。

文字通りの「ものがたり」が自然と好きな少女の恋と成長の物語。出会った場面の、二人を中央にぽつんと置いたカットがいい。

一つひとつの場面が事前に準備されていて、唐突感や違和感が抑えられているのが流石。例えば道兼の存在も、為時には事前に強く印象付けられている。それも兼家への大恩と同時に。

東宮、顔が綺麗すぎる自由な子ども。天皇、人間味があるぶん、悩み苦しみそうな気配。

馬に乗る道兼、全視聴者が「頼むから今来るなぁ!」と絶叫。従者のひと言で道兼が目を見開いて走るところも鮮やか。この物語はフィクションである。

まひろ、父が部屋にくる前は涙も流さず母の遺体をじっと見つめていたのが、夜が更けてからは自然と涙が溜まっていて、しかし決して泣きじゃくってなどはいなかったとわかるところ(顔を上げた瞬間に目に溜まりきった涙がこぼれる)、そして他ならぬ自分の父の残酷すぎる言葉にすべてを爆発させる展開、素晴らしい。

——いちど飼われた鳥は、外の世界では生きられないのよ。

——わたしは、帝の血を引く姫だから。

——最後まで聞け。

——身分の低き者を殴って私の心がおさまれば、それでよろしいと思います。身分の低き者は、そのためにおるのではないですか。

——お黙りなさい!なんということを。

2
物語を一気に進めず散りばめるような進め方。やはり兼家の存在感がいい。道兼は穢れ仕事をする都合のいい存在になっていくんだな。東宮も忘れられない存在で(これはすでに天才である、と思わせて)素晴らしい。

男のふりをしているようで、「ぜんぜんフリできてないけどなんかいい!」と思わせるレベルの代筆屋、これもとても良い。

——では、会えるまで通う。

——好きな人がいるなら、いい歌を作ってあげるわ。

——歌は要らぬ。

ここにすれ違うアイラブユーが凝縮されている、大石静、さすがだなあ。

3
赤染衛門登場。斉信、公任、行成あたり、貴族の違和感のなさ。右大臣と天皇の一騎討ちが見応えあり。

——いつか、一献傾けたいな。

4
右大臣が恐ろしさを増していく。
長男も次男も三男も、それぞれに痛みを飲み込んでいる。
そしてなんといっても、道兼、道長の名を呼ぶまひろの、それぞれに違う痛み、その切なさ。

——まひろ。俺のこと、今度会ったとき話すと約束したのを覚えてるか。
——覚えてる。
——答えるよ。

5
素性が知れた途端、真っ正直に名乗る道長。

——おれは、まひろの言うことを信じる。

泣く場面が、ここまで決まる吉高由里子。

開きなおる道兼。笑いはじめる兼家。

絶望的な回だけど、役者の演技に圧倒されるな。そして次回、道長は覚醒するのか。

8

——母に習いました。
みち

みち