Moiai

エルピス—希望、あるいは災い—のMoiaiのレビュー・感想・評価

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最初、恵那さんの吐き気が他人事とは思えず完全にわたしの吐き気で、ようやく希望を得て物が食べられるようになったと思ったら"忙しさ"により再び希望を見失い、岸本くんからの信頼、自分からの信頼まで失っていく様子は同年代の自分にはあまりに酷に映ったし自分が積み重ねてきた欺瞞を糾弾されているようでもあり本当にしんどかった
希望を見いだしては潰され、見いだしては潰され、それがセルフネグレクトへとつながる恵那と岸本に対し、自分より弱いものにハラスメントというかたちで派手に当たることで発散してきた村井さんが、ついに自分より強いものに派手に当たって、そして砕けたときは自然と涙が出てきてびっくりした ハラスメントは許されるものではないのだけれど、それが個人の意識だけではなく構造の問題であることを示していたと思いました。
斉藤さんが本当にずっと恐ろしく、しかしいろいろな意味であらがえない魅力を放っていて、恵那〜!しっかり〜!と思いながらもあんな男相手じゃしょうがないよな……と思わされていたが、最後に彼と真っ向から相対して交渉し、そして成功させた恵那、あのときようやく斉藤の呪縛から解放されて、わたしが恵那と友達だったら次に一緒に飲んだときシャンパン1本開けていたであろうほどめでたい瞬間だった 彼の訴える主張があまりに薄っぺらで、彼だって結局社会のひとつのピースに過ぎず、つまりわたしと同じであるんだよな、と感じた あんなに大きく揺るぎない存在に見えていたのに、結局変な詭弁をふるい、保身のためになんでもする小物であるのだよな……そういう人間に丸め込まれ、従属させられないように気をつけたい 時に従属は最もイージーな選択なのだけれど……
というわけでまさみも鈴木亮平も岡部たかしさんもすばらしかったのだが、郷敦さんの演技には本当に圧倒された 彼の眼力がいかんなく発揮されていた 他にもテレビ局のひと、お偉いさん、新聞記者、弁護士、警察、政治家など、あらゆるひとたちのキャスティングが抜かりなく、絵空事ではない、現実と地続きであると強く思えた すごいドラマだ あまりにすごいドラマなので、彼らの希望が砕ける瞬間は本当に苦しく、それは現実世界もまったく同じで、なので正直何度か観るのをやめようかと思ったくらい絶望した だけど、「誰かを信じられる」かぎりはなんとかなることを教えてもらったので、わたしもどうにか踏ん張っていきたい
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