サンタフェ

エルピス—希望、あるいは災い—のサンタフェのレビュー・感想・評価

3.6
久々の邦ドラです。そこそこに毎週楽しく観させていただきました。

テーマ的に新聞記者(映画/Netflix)と比較しながら観ていました。演出などは圧倒的にこちらの方が面白かったのですが、やはり今回も邦作品は汚職の肝心の肝に部分に触れないのがう〜んという感じでした。

肝というのは、汚職の当事者たちが「何を得て」「何を払う(汚職する)」のかという部分。私はカルテルやマフィア系作品が好きなのですが、現代日本ってパッと考えた時に積極的に汚職する理由がそこまでないじゃないですか。格差はなかなか広がってきてるとはいえ貧困国じゃないし社会保障もそれなりにある。仕事を干されるといったって全ての会社が囲われてるわけじゃないので別グループに就職すればよい(実際に村井さんも普通になんとかなってる)。

買収されるには具体的に何円くらいあれば、何を貰えれば人は罪を犯すのか、そこの心理描写が(創作として)興味があるけど、全然描かれない。恐怖モチベーションならブラック企業を辞められない人みたいな感じでハマってしまう心理描写をしてほしいんですよね。

例えば、本城グループが大門を支援していてその代わりに大門が本城彰を庇っていたのはわかる。でも、支援ってどれくらいの金額なの?(殺人を揉み消す値段)と、逆に支援してるということは大門が政策で本城グループに有利に図ってるということでしょうから、どういう法案をやってあげてるの?みたいなところを、軽くで良いからやってほしいんですよね。安かったら安かったでエグくて(創作として)面白いですし。ただ偉い政治家と仲良いグループ会社だから揉み消しますとされちゃうと、やっぱり陰謀論っぽくなっちゃうし創作として面白くないんですよね。創作としての面白さが現実の元ネタを感じてニヤリとするか、現実の悲壮感と重ね合わせるか、程度しかないというか。

そういう心理描写を齋藤さんが担うのかと思いましたが、彼も結局なんで信念を外れたのか何も分かりませんでしたよね。そこもあるあるのなんか上にいくと悪いやつになっちゃうテンプレってだけ。

新聞記者も心理描写が本当に皆無で、本作の一番よかったところは買収された署の刑事さんが出てきたところでした。あの消極的に加担していく心理はとてもわかる〜となりましたね。新聞記者は本当にNoと言えない日本人一点突破みたいな描き方だったので、そこは本作の方が全然よかったです。

それ以外の部分で、面白いながらも勿体無いなとずっと思っていたのが長澤まさみのキャラで、本当に被害者もそうだし正義とか何にも興味なさそうでウケました。最後の取引も正直意味がわからないし(口で言うだけで言って騙し討ちで大門もやっちゃえばいいじゃんとしか思わなかった)。

まず齋藤さんに物理的に大門報道を封じる手段がないので“取引”になってないんですよね。仮に長澤まさみの出した条件である「本城彰の報道を邪魔しない」「警察を邪魔しない」が、実際に交換条件を受けなきゃ揉み消されるということなら、そもそも大門サイドは本城彰案件を長澤まさみが言おうが言わまいが関係ないという話になりますよね。で、百歩譲って仮にそこを信頼するとしても、免罪が確定した瞬間に大門の報道を止める義理はなくなりますよね。その辺が主人公sがずっと言ってるように、正義でも真実でもなく「勝ち負け」でしか動いてない所詮マウント合戦でしかないということが出ちゃってるわけです。

岸本くんが今どきのナヨっぽいキャラから友人のイジメによる死を原体験に変わっていく非常に良いキャラクターだっただけに長澤まさみが本当にショボいキャラで残念でした。岸本くんがイジメが原体験だとすれば、長澤まさみは高校生とか大学生とかの同級生間のマウント取りが原体験みたいな感じ。なんかここがもう少し魅力的なキャラクターだったら作品全体が面白くなったのになとなりました。
サンタフェ

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