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エルピス—希望、あるいは災い—のbluebeanのレビュー・感想・評価

4.0
真実を伝えたいという思いを権力のエゴによって抑圧されてきたアナウンサーの浅川が、仲間との協力を通じて誰かを信じる心を持つことによって勇気を得て、社会の圧力に立ち向かっていきます。社会の悪を描くドキュメンタリー的な側面よりも、その下で無力感に苛まれる個人の内面が強調されていて、すごく引き込まれました。

前半で小さな勝利を得てバライティから報道に復帰した後、再び組織に組み込まれて停滞する主人公の描写が重いです。その分ラストのカタルシスが最高でした。

浅川とディレクターの岸本の2人の視点が交互に切り替わりつつ語られますが、一方が落ちている時にもう片方が動く、という補完の関係になっているところがテーマを象徴していて見事です。

自分の思いを抑圧する状況が、摂食障害が睡眠障害などの症状で表現されます。次第にそれに慣れていくように見えて、じわじわと蝕まれていく様子がリアルです。

勧善懲悪ハッピーエンドではなく多少モヤっとした感じですが、正義という曖昧なものよりも、身近な人を助けることを選ぶというラストに共感できました。馬鹿正直に生きるのではなく、善い目的のためには権謀術数を使うマキャベリズム的なものも完全否定していないところが面白かったです。
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