こたつむり

エルピス—希望、あるいは災い—のこたつむりのレビュー・感想・評価

4.5
2022年10月期の覇権ドラマと評判の作品。
うん。その評価に違わない傑作でした。何しろ、製作姿勢から違います。テレビ局のドラマなのにテレビ局を真っ向から批判しちゃいますからね。その意気込み、見事です。

しかも、それが空回りしていません。
小道具や大道具などから細部まで拘ったことが分かりますし、脚本も“不必要な説明描写”は最低限に留めているのでテンポは軽快。気付けばググっと惹き込まれちゃうのです。

この辺りはチームワークの勝利でしょうね。
物語の骨格となる脚本を皆が理解しているから細部で破綻しないのです。それに一話に一回は、魂が震える場面を入れる“お約束”もありますし、コメディ要素を忘れない余裕も素敵でした。

また、センス溢れるのがOPとED。
オープニングの方は昭和っぽさを意識させる作りながらも「このドラマは面白そうだぞ」と思わせる作りで、掴みとしてはバッチリ。特にOPテーマが印象的でした。

片やエンディングの方は「この先どうなるのだろう」と思わせる“不穏さ”を脳裏に刻み込んできます。だから、次が気になるんですよね。とてもセンスに溢れる仕上がりでした。

そして、それに応える出演者たち。
特に重要なのは眞栄田郷敦さん。寡聞にして知りませんでしたが、あの伝説のスター千葉真一さんのご子息だったんですね。存在感というか“目力”が違うのも頷けます。

あと、美味しかったのは岡部たかしさん。
セクハラ、パワハラまみれの飄々としたチーフプロデューサーという役どころなのに、気付けば“ジョーカー”というポジションに収まっていたのは、最高に最高でした。

まあ、そんなわけで。
冤罪事件を主軸に据えて、自己批判しながらも「当たり前のことを当たり前に行うこと」の大切さを描いた物語。違いの分かる大人の鑑賞に耐え得る出来栄えです。

何しろ、建前を振りかざしませんからね。
作品の性質上、「真実」という言葉が飛び交いますが、そこに“重み”はありません。また「正義」という単語も意識的に避けている様子。この辺りが“甘ったるく”ならない理由だと思います。

ドラマ好きならば是非に。
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