浮かべてフェミニン

無言館の浮かべてフェミニンのレビュー・感想・評価

無言館(2022年製作のドラマ)
5.0

ヒッパレの限定復活だけが見たくて録画したのを見ていたら
おぉキャストすげーなと思い何の気なしに見始めたら、もうそれは駄目なくらい泣いた。もう駄目だった。

戦争映画は特に見終わった後に確実にメンタルがやられてしまうのであまり見ないようにしていて、これも戦争映画の部類ではありますが少し戦争への捉え方が違った
惨い殺戮シーンや戦闘シーン、ましてや軍服を着た兵隊さんの出演シーンは一切無く、視聴者の想像力だけで戦争という凄惨な過去を委ねます

過去〜現在までを行き来しつつも、無駄のないカット割とカメラワークで静かに物語は進んでいく
実話を基にした作品なので盛り上がるところもなく盛り下がるところもなく、本当に淡々と流れていきます。本来実話なんてこんなもんだよね、と。
こういう静かなドラマや映画が苦手な人もいると思います
視聴者の想像力で理解をしていかなくてはいけないので難しいと思う
ただハマる人には泥沼のようにハマる

役者陣が見事な演技力で、ただただ感嘆
若い役者も数人出ていますが、きちんと演技力のあるキャスティングなので、単発ドラマにありがちな目が死んでる棒読みの子はいません
ジャニーズの子も一人出ていましたが、気にならないくらい馴染んでいました。むしろエンドクレジットで、ジャニーズなの?と驚いたくらい
そして出演シーンもほんの少しでした笑笑

脚本・監督の劇団ひとりも素晴らしい構成力
やはり元は芸人さんなので大人がクスッと笑えるシーンも取り入れていて素晴らしいです。
おじさん二人の美術館作るぞ〜!珍道中かと思いきや、しっかりと戦争という重いテーマを軸に、
出征された画学生たちのバックボーンや家族関係も深すぎず浅すぎず盛り込まれています

檀ふみさんの最後のシーン、フィクションかと思い調べたところ完全なる実話でした
むしろ、ドラマの最後の長台詞はだいぶカットされていたくらいでした
本当に実在していたんです。出征した恋人の画学生にあの絵を描いてもらった女性の方が無言館に来館され、感想文ノートにメッセージを残したようです
本来のノーカット版はYouTubeのAsu musicさんという方の公式に上がっていました。ピアノ演奏と相まってこちらもボロ泣き…
無言館の公式YouTubeもあり窪島さんの講演も聞けます、おすすめです

檀ふみさん、本当に良い年齢の重ね方をされていて長台詞もすごく聞きやすく耳馴染みの良いお声で、「あの夏のまま」の情景がありありと見えるようでした
絵画の中のモチーフがCGで動き出すのは、やりすぎ感はありましたが、まああそこで少し盛り立てないといけなかったんだろうなと大人の事情が垣間見えます。絶対、劇団ひとりの要望じゃないだろ感あり


総じて、見て、知れて本当に良かった。と思えるドラマでした
若い子には刺さらないと思うけど、大人たちには絶対に刺さる
お涙頂戴!のような今までの24時間テレビのドラマは大嫌い。病気で死ぬ系のドラマって世界の中心で愛をさけぶ。以降うんざりしていたけど、ここまでのドラマを作るとは本気でやりにきてる
演技力のある俳優さんももちろん大事だけど、脚本・監督はもっと大事なんだなとしみじみ。


ーー「戦争に出征する彼らのあと10分。あと5分。を自分たちは今大切にしてるか」
私たちも自問自答しながら生きていかなければならないな
きっと最期まで答えが見つからず、あの世でやっぱり分かんなかったな!と終わりそうな長い長い自問自答になりそうだけど、この言葉の意味を知れただけでも良かった


浅野忠信さんが演じた館長さんも、寺尾聰さんが演じた画家さんも、レビュー現在まだご存命でいらっしゃるんですね
無言館、絶対に行きたいところになりました。

私のFilmarks第一作目がこの作品でよかった

浮かべてフェミニンさんの鑑賞したドラマ