ShojiTaniguchi

オリーのShojiTaniguchiのレビュー・感想・評価

オリー(2022年製作のドラマ)
4.6
持ち主だった少年と離れ、孤独な迷子になってしまった人形のオリーと、同じく孤独に過ごしてきた人形たちが、それぞれの帰る場所へと果敢に向かう旅の物語。

概要だけだとワクワクするアドベンチャーのように思えるが、その主役達の過去と現在の辛い体験の描かれ方はとてもビターで、ダークファンタジーと形容する方がより正確かもしれない。
ピクサーのトイ・ストーリーシリーズと比較する人も少なからずいそうだけれど、個人的には、全年齢向けの作品づくりを前提とするピクサーがなかなか踏み込めない領域にまで踏み込んでいる作品だと感じた。

主役の人形たち側の物語の展開がとてもダイナミックかつドラマティックで惹きつけられるが、もう一方の、オリーの持ち主だった少年とその家族の物語にもしっかりとした展開があり、思わず涙がにじんでしまうシーンが何度もあった。
脚本上の緻密な仕掛けも丁寧に仕込まれていて、物語の全体像や人物とモチーフの関係性が明らかになってくる終盤には、その構成の巧みさにとても驚かされた。

自分がいるべき場所、帰るべき場所はどこなのか、人間は何を心の拠りどころにして生きていくのか、といった強いテーマ性があり、世代を越えて受け継がれていく想いの尊さも描かれていて、心を強く打たれてしまった。
もっと注目されてもいい、これは隠れた傑作だと思う。
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