無影

大奥の無影のレビュー・感想・評価

大奥(2023年製作のドラマ)
4.0
原作の内容と精神を見事に受け継ぎドラマ化した作品。あの壮大な大河作品のおよそ半分を45分×10話にまとめるのは至難の業だったと思いますが、そこは、さすが森下さん。尺との関係で多くの要素がカットされていましたが、原作で大事な場面はしっかり押さえられていて、その間にドラマオリジナルの展開もちゃんと接着されていていました。特に、綱吉が韓非子の記述の一致から右衛門佐の計画を暴く場面は、綱吉の色狂いとの評判の裏に隠れた切れ者ぶりと右衛門佐の綱吉に対する評価の転換を同時に描いていて、極めて秀逸だったと思います。
また、スタッフの皆さんも原作の精神を受け継いだプレイヤーでした。特に、NHKのドラマで初めてインティマシーコーディネーターを導入したのは見事でした。大奥には女性の地位向上を志向するフェミニズムの精神が込められていますから、お話の性質上、性的な描写が多くなる本作においてインティマシーコーディネーターを起用したのは、まさにその精神に合致すると思います。
そして、キャストの皆さん。皆さんが原作のキャラぴったりで、特に三将軍を演じた冨永愛さん、堀田真由さん、仲里依紗さんは、この役を演じるために生まれてきたのかなと思うほど。いや、きっと皆さんも原作の精神を受け継ぐプレイヤーになれるよう努力して役作りされたからそう見えるのだとは思いますが、皆さんが『大奥』の世界を全力で演じてくださって、原作ファンとしては非常に感慨深かったです。
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