Asino

イルマ・ヴェップのAsinoのレビュー・感想・評価

イルマ・ヴェップ(2022年製作のドラマ)
4.2
最後なんだか泣けてきた。
映画への愛の深さと、でも傷つけられてきたゆえの怖れと、でもけして忘れたり離れたりはできない、という重さを感じさせる、それでいて軽やかな結末。……というかまあきっちり「終わり」にはならないのよね、たぶん彼の人生そのものだから。そういう曖昧さもとても好き。

思えば、魂の形で自由に動き始めたミラは、「イルマ・ヴェップ」の姿で愛していた人の元に行き、そして毎回改めて裏切られるような、切り捨てられるような言葉を聞いていたんだった、と、最後にふわりと現れる彼女を見て思った。

アサイヤス作品はいつもとりとめないようでいて、見るたびに引っかかる台詞が変わっていくような、その時のその人の精神状態や年齢やいろんなことで受け止め方が変わると思う。これまた頭からゆっくり見たいな。
もったいなくてちょっとずつ見てたのに、やっぱりそう思っちゃうから厄介だ。

そしてやっぱりラストカットを見ると、イルマ・ヴェップはパリで撮らなきゃ絶対ダメなんだな、と思ってしまった。中心部の建物の美しい屋根も大事な要素のひとつ。
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