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グレースの履歴のnorisのレビュー・感想・評価

グレースの履歴(2023年製作のドラマ)
3.8
源孝志が同名の自作小説を自らドラマ化したもの。

パリ郊外で客死した妻が、免許を持たない夫にホンダS800(逆輸入の左ハンドルモデルで、これが「グレース」)を寄贈する遺言をわざわざ遺していた、というところから始まる、カーナビ履歴から妻の立ち寄り先をめぐるロードムービーである。

中盤にグレース王妃とホンダのエピソードがあって、これがタイトルの所以なのだが、思い入れたっぷりすぎるうんちくにはいささか鼻白んだ。続く金沢編が重いのでインターミッションのつもりだったと思われるが、わたしのように脱落する人もいると思う。気を取り直して続きを見るのにひと月ほどかかってしまった。

最後まで見れば、謎がほぐれていくにつれて語り手自身の立場が危うくなっていくというロードムービーの教科書のような話である。いつもの滝藤賢一のちょっと読みにくい芝居がうまくマッチしていたと思う。そして謎の妻役はオノマチでなければ成立しなかっただろう。

源孝志作品の特徴は、地に足のついた人物が登場させることで地方を描くことなのだが、ロードムービー形式との相性は良すぎる。
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