群青

TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇の群青のレビュー・感想・評価

TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇(2022年製作のドラマ)
3.4
実際の放送は観れていないが、存在は知っていた。ごく一部にカルト的な人気を誇っておりそのごく一部が今では様々な分野で活躍するクリエイターたちであることから、今作のでたらめさの証拠になっているといえよう。

自分はリアルタイムでは経験していないが子供時代に夏休みは冬休みの時の再放送でかいつまんで観ていた。
しっかり観たわけではないがタローマンのべらぼうさに子供ながら強烈な印象を受けた。
おかげで今作を観た翌日から宿題はサボりがちになり友達とも距離を置き孤独になろうとしたし、部屋も汚くなった。
とにかくでたらめになろうとしたし、マイナスに飛び込もうとした。あの時だけは全ての遊びで命懸けだった。
ただただ爆発だった。


大人になった今では凡庸という海に浸り、ルーティンな仕事の毎日。周囲の人間の自分への評価ばかり気にするようになってしまった。

ふと、テレビをつけるとタローマンがやっていた。
あの時と変わらないべらぼうさに、うまくあろう・綺麗であろう・心地よくあろうとしていた自分を恥じた。
そして誰にも囚われない自分だけの歌を歌おうと決心した。





タローマンがどういう作品か知っている人なら、上記がどういうことか分かるのは置いておいて笑
岡本太郎に対してうっすらした情報しか知らない自分でも楽しかったし、もっと知ろうと思った。

作品のコンセプト自体が面白いし、氏の発言を基にしたタローマン含めキャラクターやその言動が面白すぎる。
立ち位置が意味不明なさすらいの旅人のただただだ旅人っぽい雰囲気とか、あの時代よく壊されたであろうビルのオーナーである会社のお偉いさんとか、 私も同意見ですと、言うばかりで責任がどこにも存在しない敵とか笑

しかしやはり魅力的なのはタローマン本人。
でたらめな挙動、引っ張っておいて一発で敵を吹き飛ばす、地獄耳で悪口に敏感、腕相撲で負けそうになったら必殺技で無かったことにする、最終話の全て爆破すれば自由だ!という全てちゃぶ台返しする奔放さ、もろもろ爆笑モノ。

しかし、こと創作活動においてちゃぶ台返しなんてものは日常茶飯事だと思われる。
むしろそうしたちゃぶ台返し返し返し返し…くらい先に本当に創りたいものがあってりするのだろう。タローマンはそういう岡本太郎の掲げた信念を真摯に伝えてくれる。内容がシュールな笑いに徹しているのにちゃんと真摯なところはバランス感覚が絶妙。

それもこれも関わっている大人の本気度が伝わってくるからだと思う。本編以外でもサカナクションの山口一郎が当時のエピソードや当時のオモチャを交えて本気で語っていたりする。

後日放送されたタローマンの創作秘話、というテイで作られたタローマンヒストリアにはタローマンの前に放送されていた特撮の説明とかしやがるし、なんなら樋口真嗣が何が良かったか具体的なエピソードを交えて話をしやがる(褒めてます笑)


タローマンはいないし、放送されていないし、グッズもないし、前番組もないのにみんな本当にあったかのように話すし番組が作られる笑

大人が本気で遊んだら面白いんだぜ、のいうのをまざまざと見せつけられて気持ちいがいいし、面白すぎる笑

個人的にタローマンヒストリアで一瞬映る撮影の間の写真、タローマンが製作者に対しても物申してるあの写真が最高だった。有名な円谷監督とウルトラマンの写真のパロディなんだけど、指示しているのがタローマン側というのがいかにも“らしい”ので最高。

なんだこれは!と疑問に思いながら観て爆発してくれ。マジで。
前編後編含め5分ちょっとで1話が終わるし全10話しかない。
YouTubeで公式公開もされている。

こんなに手軽に大人の本気の、いや命懸けの遊びを堪能出来るのはタローマンしかない。
この年末年始の休みを使わないわけにはいかないだろう。
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