開明獣

ペリフェラル~接続(コネクト)された未来~の開明獣のレビュー・感想・評価

5.0
昔から現在に至るまで、SFは蔑まれ、虐げられてきた。メアリー・シェリー、ジュール・ベルヌ、H.G.ウェルズといった古典から、近年ではジョン・G・バラードや、スタニスワフ・レム、アースラ・ル=グイン、ストルガツキー兄弟、オラフ・ステーブルドンと言った映像化の素材にもよくなり、かつ文学的意義の高いものまで、文学史上では黙殺されてきた。

それは我が国でも同様で、認められたのは僅かに芥川賞を獲った円城塔くらいかもしれない。子供が夢中になるお伽噺の類として、文芸評論家や権威ある文学賞の選者に軽んじられてきたこのジャンルは、後世で大きく評価されるに違いない。

何故ならば、文学とは創造力の飛翔に他ならないからだ。

絵空事として扱われてきた出来事は、どんどん現実化していく。気づいた時には、SFに現実が追いつき、またSFは新たなる地平を切り拓いていく。

そして、サイバーパンクの産みの親として、ハードコアなSFのジャンルではグレッグ・イーガンと並んで重要な作家、ウィリアム・ギブソン原作の作品がここに映像化される。その主演を、クロエ・グレース・モレッツが演ずるとあらば、あまりSFに知見のない開明獣ですら、アドレナリンが大量に分泌する。

モレッツは、ただのかわい子ちゃん女優ではないことは、近年の出演作(駄作・凡作もあるが、それは監督と脚本に負うところが大きい)を観れば分かるところ。

この原作は、未翻訳。翻訳が待たれるところだが、この映像化作品を観て良ければペーパーバックを取り寄せたい。

ギブソンの反権威主義は、今のシステムに対する絶望感と、それに対するブレークスルーへの渇望とに根ざしている。その渇いた世界がどこまで再現されているか追いかけていきたい。
開明獣

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