雀

ダーマーの雀のレビュー・感想・評価

ダーマー(2022年製作のドラマ)
4.0
被害者遺族と問題があったり、内容もきつかったりで観るの時間かかった......

遺族や関係者の方々は事件のことを忘れたいものだと思っていたけどそうではなかった。忘れられない、忘れられるはずがない。でも世間は時が経つとともに忘れていってしまう。だから慰霊碑や記念の場所が必要。風化してはいけない。

怪我をしたとして、その傷跡が消えても消えなくても同じなんだと思った。目に見える傷跡がなくなれば他人が気にしなくなるだけ。本人にとっては忘れられない出来事。起きた事実は変わらない。

ダーマーの親は息子がしたことに対して責任を感じている。その贖罪の話というような節があった。母親は耐えられなくなり、父親は間違った方向に行動を起こす。父親の愛は深いというふうに描かれていたが、これは愛ではないと感じる。大量殺人を犯した息子から許しを求められ、それに応えるように抱擁し許しを与える。ダーマーもこの父親も正直軽蔑することしかできない。立派な父親でありたい、自分が間違えたと思いたくない。良い親という存在価値を愛してるんだろう。忌々しい事件に関することで金儲けしようなんてありえない。

「ダーマーだけを人々の記憶に残させない」
グレンダは強い人だった。どこまで事実なのかわからないが、彼女のこのメッセージのおかげでこの作品に価値が生まれたと思う。
でも、これが伝えたいことならなぜタイトルをダーマーとし、副題にダーマーの物語とまでつけたのかわからない。

凶悪事件のエンタメ化について問題提起しているのはわかるが、それならなぜドラマ化したのか。現実離れしているせいか、1人のキャラクターのように見えてしまっている。現実であり、被害者がいると明確に理解する必要がある。悪のカリスマなどと現実で崇めてよいものではない。

どうして私はこの作品を観ているのか。鑑賞していくなかで何度も考えた。このドラマはダーマーのルーツを追ったものではなく、被害者やその遺族の方々の痛みだ。傷を負った人々の人生の一部であり、苦痛を味わった人、今でも痛みを持って生きている人がいることを忘れない。
この事件が生み出した終わることのない苦しみを知ることが、鑑賞の意義であったと思う。
雀