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ダーマーのYOKのレビュー・感想・評価

ダーマー(2022年製作のドラマ)
4.2
お前、これ、好きそう。とおすすめされたので見て観た。みんなが恋に落ちたX-Menシリーズでクイックシルバーを演じたエヴァン・ピーターズが主演ってだけで胸が高鳴った。



※以下ネタバレ含む感想(長い)
※各話ごとの感想(長い)
※書きたいことダラダラ書く(故に長い)



■第1話
スタートからもう不穏。ゴリゴリに不穏。勝手に、主人公のダーマーって若い女の子を無差別に狙って殺すサイコパスなんだろな、と思っていたら被害者男性で驚いた。ここで流石にあらすじだけ読んだら「17人の青少年を殺した」ってあって、男性に殺される=若い女性と本能で勝手に思い込んでしまった自分が恥ずかしい。なんてステレオタイプなんだ私の脳みそは、反省する。

しかしだよ、こんなん防音のぼの字もないようなアパートメントで随分と雑な仕事をするもんだなと思った。匂いも漏れてるせいでお隣さんめっちゃ怪しんでるし。ってか、お隣さんもとりあえず911したら?と思ったものの、通報しても無視されてたのかと思うと警察がアレじゃん。

にしても第1話の緊張感すごい。ダーマー、パッと見は殴れば何とかなりそう感ある男性なのに、彼の世界(部屋)に連れ込まれた日にゃ蛇に睨まれた蛙に成り果ててしまう嫌なギャップの持ち主だった。第1話は犯行に失敗し警察に捕まるところから始まるんだけど、なんで彼はあっさり捕まったのか不思議だった。性格なのか、捕まりたかったからなのか、この辺はドラマを見続ければわかるのかとても気になる。


■第2話
ダーマーの幼少期が描かれているのだけど、家庭はだいぶ崩壊気味で気の毒に思うものの、静かにゆっくりとダーマーの残虐性が現れてくるのがジワジワと恐怖を感じさせた。死や遺体への興味が将来的にダメな方向へ向いてしまったのかと思うと、残念に思う気持ちもあった。

同性愛者でもあるダーマーが、どうやってその欲を満たしていたのかの初期の描写(マネキンとのアレ)が、これまでに見た事ないものでなんとも言えない感情芽生えた。その次の瞬間、1991年にタイムスリップし、既に少なくとも1件の事件が起きてたのには「ぎゃ!」ってなったわ。手口一緒や。

最初から隣人女性が有能(ダーマーを怪しんでた)で、警察が無能(ちゃんとダーマーの部屋を見て回らない、同性愛者に関わりたくない感強い)なせいでダーマーの犯行が長く続いてしまったのかと思うと悔しくてたまらん。

ラストの実際の音声、あのやり取りをしている時にダーマーは部屋で…って考えると鳥肌立った。


■第3話
ジェフ(ダーマー)の母ちゃんが妊娠中のところから話が始まる。ちょっとヤバない?ってくらい薬を飲んでいるので、もしかしてこれもダーマーの人格形成に影響があったのでは?と思ってしまった。母体からの影響って多分あるよね。

17歳は子どもじゃないからと母親も父親も面倒見るの放棄するのクソ。一見すると父の接し方は悪くなくも見えるけど、優しい虐待のようにも見えなくないので複雑。母ちゃんは身ごもっていた時から出ていくまでずっとジェフに対してクソ。心の病だからと言い訳できないレベル。

そしてジェフついにやりおる。良心の呵責なんてものは微塵もなく処理するのが本当にイカれてて見ていて気持ち悪くなった。
ってかこの人、随所随所で警察官と関わってるのに放免されてしまう運の良さがあるのな。


■第4話
スタートは1991年で、現代の捕まったジェフが供述をしていると思ったら、1978年に…と時代があっちこっちしてちょっと混乱。話のメインは高校卒業して軍に入る時代あたり。

前話では母親がだいぶ酷かったけど父親もなかなか酷い。ジェフの話も聞かず母親のしでかした事に文句を言い(特大ブーメラン)ジェフの進路を勝手に決め家から追い出す。そこからどんどんジェフの欲への渇望と行動がえらいことになってく。見ていてヤバすぎて笑えん。

そして話は第2話の祖母宅での生活へと繋がる。ジェフどれもこれも上手くいかないくせしてアクティブだし、当たり前に犯罪まがいなことをするだけでなく!何度でも同じ手口を繰り返して相手を陥れようするの、むかっ腹立った。


■第5話
スタートは現代でジェフが供述しているところから。供述内容がおばあちゃん宅で行った殺人と遺体処理に関してなので回想シーンもその時代なんだけど、おばあちゃんの台詞の7割が「ジェフー!?」なの少し笑ってしまった。いや、笑うところ違うんだけど。

おばあちゃんのおかげで助かる命もあるので、なんか印象深い回だったな。犯罪歴のない黒人よりも犯罪歴のある白人を信じるのか!の台詞があまりにもアメリカ的で胃が痛くなった。

何度めかの逮捕の末に裁判も行われるんだけど、何故だか裁判長が同情的でビックリするくらい軽い刑なのにも頭抱えた。被害者がアジア系だからって真面目に話も聞かず、前科だらけのジェフを白人ってだけで優遇する白人主義な裁判長は今すぐ更迭されろ。お前が迫害されろ。(極論)

最後に第1話で捕まった時に住んでいたアパートが出てきて「ここー!」ってなった。ついに始まるんだな、って感じめっちゃ強かった。いや、既にダーマー始まりまくってるけども。


■第6話
赤ちゃん爆誕シーンからスタート。どなたかな?と思っている間に時は流れて1991年。もう嫌な予感しかしない年である上に全話の最後を思い出して既に「やめてダーマー!」だった。

が、予想に反して前半はだいぶ穏やかで、え?これダーマーであってるよね?ダーマー見てるんだよね、私?って慌てた。さんざジェフは悪行を重ねてきたわけだけど、もしこのまま穏やかに暮らせていたら…って思うと切なくもあった。トニーの心の綺麗さが国宝レベル。

ちょこちょこ「あれ!?これ見た事あるな!?」ってシーンがあって第1話と繋がっていく展開の仕方が個人的に好み。しかしこの時代(今も?)の警察や裁判官諸々の白人主義には吐き気がする。ラストちゃんとダーマーが捕まってよかった。


■第7話
序盤の隣人のおばちゃんの訴えが切実で何故か涙出た。そう、あまりにも遅すぎるし取り返しがつかないほどの犠牲が出てるんだよな。逮捕が遅すぎるし、この期に及んでも警察は自身や仲間の保身に走ろうとする中でジャクソン牧師やジャーナリストのグレンダが奔走し出す。ダーマーの犯した事件をきっかけに黒人やヒスパニックといった抑圧されてきた人々の怒りが溢れ出す、これまでとは違った見応えのある回だったと思う。

もうグレンダが家政婦は見た状態。ダーマーが怪しすぎて覗き見たり聞き耳を立てたり。都度都度警察に連絡するけど「ふーん?で、どうしろっての?」な警察にイライラする。

ダーマーに直接ではなく間接的に被害を与えられ続けた人の苦悩をこうして描いてくれる回があって本当に良かった。彼による実害はあまりにも多岐に及んでいたんだと思うとゾッとする。


■第8話
パパがあかん。そんな子に育ててない!私は悪くない!私のせいにするのか!?って、お前なんでわざわざ息子に会いに来て自らを庇う?ってか、お前、息子育てたか?妻に丸投げ→祖母に丸投げ→一人暮らしさせて放置、だったろ?は?

エド・ゲインの判例を逆手にとって心神喪失で無罪ゲットしようぜ!な案を出す父親と弁護士の作戦になかなかウンザリした。子の為に必死になる父親としては正解かもしれないけど、彼の死たことを考えると決して正しい行いと思えない。ライオネルの後妻さんが1番大変だし、大人だし、しんどそう。

判決が出たあとのジェフリーの実の父母の決断がどちらも悲しかった。自分のせいだからこれからも支えることを選んだ父と、昔家を出た時と同じように逃亡を図ることで罪を償おうとした母、どちらもしんどい。

例の警察官二人があっさり復職したことに失望しながらもまだまだ闘うことを辞めようとはしない牧師サイドを私は応援する。


■第9話
ダーマー、ようやっと刑務所へ。日本でも稀に聞くけど、やばい殺人鬼や犯罪者にはカルト的な人気が集まることがあり、ダーマーも例に漏れずその道を進むようになる。一方、悪人の集まる刑務所仲間からは「お前まじサイテー」と引かれているのでなんとも皮肉な話。

ダーマーが好むクジラの鳴き声は自身の心の内を比喩しているような存在なのかな?自分は泣きたくても泣けないけど愛を求めてる...的な。

ダーマーもそうだけど父親の行動も被害者側のことを思うと非常識に思える。でもこのドラマもそうだけどエンタメ化することで知れる事実もあるので複雑な気持ち。たた、息子をネタに本を出して金を稼いでそれを遺族に渡すのを渋るのは違うだろうと。ダーマーにはファンがつき、親は息子をエンタメ化すること事でよに認められる一方、被害者はトラウマに苛まれ被害者や遺族一族はセカンドレイプ状態。こんなの苦しすぎる。

そして相変わらずの白人至上主義。黒人からの通報は無視するくせに白人の通報に対しては迅速な対応。クソか?果てには人としてヤバすぎるイタ電までする。お前らも100年くらいムショに入ってこい。

このアパートの管理人がなんだかんだいい人で、弱々しくも見えるものの住民にも紳士でこの作品で一番好きかもと思った。


■第10話
最初から最悪。模倣犯かと思いきやまさかのジョン・ゲイシー出てきちゃった。ダーマーとゲイシーって同時代?と思ったらゲイシーが捕まった年からダーマーの犯行が始まっていて嫌なすれ違いなだなと吐き気覚えた。

傍若無人な態度で反省もなく刑務所生活を過ごすダーマーにキレる囚人の一人がまともに見えた。なんの罪を犯したかは知らんけど敬虔なクリスチャンになった彼からしたら、ダーマーが洗礼を受けるって心底辞めてくれだってろうな。

そんな洗礼のシーンとゲイシーの死刑執行シーンのがリンクするのが見物。ゲイシーの最後って薬が効かなくてだいぶ苦しんだって聞いたことがあったのだけど、この作品では眠るように安らかに執行される姿が描かれていた。

一方ダーマーの最後も前もって知っていたのでラストに驚きはなかった。知っている人が見れば、彼がそうなんだろうなってすぐ分かる描き方をされていたし。

良くも悪くも「神」を建前に行動するダーマーとスカーヴァーは主張する意見は異なれどやってることは人外で同じ穴のムジナって感じ。無視論の私には、神のために!とか、神の元に帰ったから赦される!とかまるで分からんで、この辺の心情はどちらの気持ちも不可思議だった。

亡くなったダーマーに「愛してる」と父親が泣きながら言うんだけど、それを幼少期からちゃんと言葉と態度で彼に直接ぶつけていたら何か変わったのかもと、タラレバなことを考えてしまった。しかしダーマーの死後の父親を見る限り、人はそう簡単に変わらんなとも思った。



最初から最後まで凄かった。
ダーマーだけの問題でなく、親との関係や当時のアメリカにおける白人至上主義や差別、メディアの罪なども浮き彫りにされていて多方面から見応えがあった。

確かに見るに堪えない描写も多く目を逸らしたくなるようなシーンもあったけど、個人的には見てよかったし、やはり観る前に思っていた通り私は被害者と被害者家族に近い目線や気持ちで見進めた。

ジェフリー・ダーマーの住むアパートの隣人にもしっかり目線が向けられているのも良かった。当時からダーマーの死後までずっとダーマーの犯した事件に人生を染められてしまったと思うと、彼女もまた彼の被害者だと思う。被害者と遺族のことを考え行動する彼女の強さが本当に凄くて尊敬の念しかない。

ところでこれ、第2シーズンの制作が決定していると聞いたのだけど、ど、どのように?ダーマーの最後まで描き切ってる感あるし何をどう続けるんだろ...。
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