傘籤

ダーマーの傘籤のレビュー・感想・評価

ダーマー(2022年製作のドラマ)
-
1991年アメリカで発覚した「ミルウォーキーの食人鬼」事件をドラマ化した作品。犯人であるジェフ・ダーマーは1978年から1991年のあいだ17人の青少年を殺し、死姦、人体破壊、食人を行っていた。非常にショッキングかつセンセーショナルな事件であったため、これまで何度か映像化されてきたのだが、このNetflix作品は長いスパンでこの男の人生を描き、「何がジェフ・ダーマーという殺人鬼を作ったのか」ということを見せていく。同時に彼によって殺された人々、その家族、刑務所以降の暮らしも映像化し、重層的にこの「時代」を捉えようとしているように見えた。どちらかといえば彼の残虐性や異常性よりかは(それも嫌になるくらい映されるわけだが)、警察の怠慢、お役所仕事、両親のネグレクト、アルコール中毒、などの問題点を浮かび上がらせることで問題提起も行っているのだろう。正直かなり残虐で陰鬱、気分が悪くなる展開ばかりなので体力のあるときじゃないと観てて相当しんどい作品だと思う。私は小分けにしながらようやく見終わりました。うーん、作品の出来は確かにいいのだけど、10話もかける必要があったのかなあ、という気もしてしまう。なぜならこれは上記したように何度も映像化されている事件だし、被害者家族のメンタルヘルスのことを考えると事件を「消費」しているという議論が巻き起こってもおかしくないからだ。「事件を忘れないため」という主張は理解できるんですけどね……。作品の完成度のみを考えると、重厚感はあるもののしまりはない印象で、中だるみするのがちょっとマイナスポイントかな。ジェフ・ダーマーを演じた俳優さんは異常性と虫唾が走るような気持ち悪い演技をしていて見物です。
傘籤

傘籤