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ダーマーのKのレビュー・感想・評価

ダーマー(2022年製作のドラマ)
3.5
ジェフリー本人、そして彼の周りの全ての人が、未来を変えられたはずの選択を、百発百中で間違えた結果うまれたのがジェフリー・ダーマー。

人それぞれ生まれつきの特性があるにしても、幼少期、思春期の家庭環境が彼の人格に影響を与えたのは言わずもがな。

無関心な母親、THE家父長制で自分のキャリアしか考えず、たまに帰ってきては子供の前でも怒りを妻にぶつける父親、そんな姿を見て育てば、人とどのように関係性を築くのかや、気持ち(怒り)のコントロールの仕方も学べない。彼女は?と何度も聞く協会通いの祖母も、ゲイの本人からすれば苦痛だろう。

幼い時に動物の死体の解体をさせてしまったのも、マネキンで性欲を満たすことを覚えてしまったのも、成長期にそれしか選択肢がなかったことが、その後の彼の願望になり、事件に繋がってしまうとは。


逮捕後、父親がジェフリーに寄り添おうとしているように見えるけど、事件直後執筆に没頭することで息子が犯した今の現実から逃げているようにも思うし、精神判定に持ち込もうとするのも、息子を想うからではなく、自分の遺伝子や育て方のせいではなく病気になったからだ、自分の息子は正常に戻るはず、と思いたいという、自分は悪くない精神の表れにも感じた。


ジェフリー本人はとくに、人種的マイノリティを狙ったわけではないようだけど、明らかに当時の人々のマイノリティへの偏見に溢れた意識の中でこんなに大きな事件になってしまったと言える。

アジア人としてショックだったのは、アジア人被害者へのサポートをしたのはアジア人のみで、黒人グループからもサポートされず、白人警察官からの嫌がらせも受けていて、ヒエラルキーの最下層なんだな〜と実感した。

こんな時代を経て現在もなおマイノリティ軽蔑が変わらない現実に、そりゃデモだって暴動だってしたくもなるよ、なんでまだ変わらないのかと。それを、流行りの物語とか、デモとかしないで冷静になれよ、とか、、黄色人種が安全地帯から言ってる残酷さ。権力のある立場にマイノリティ当事者がいることの重要性を改めて思う。
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