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黒い蝶のgeminidoorsのレビュー・感想・評価

黒い蝶(2022年製作のドラマ)
4.0
好きな監督オーディアール作の"預言者"で以前に知った贔屓のニエル翁が出演している様なのでチョイス。
好きなんだよネ〜彼の他幾多の役者に無い根っから危ない味わい。人生滲み出とるヨ。

本作では脇役の彼の話はさて置き。
それにしても本作は映像や演出、時系列編集に於いて予想外!つまりドラマにしては当たりでした。
兎に角、ストーリー転開が想定外。最終で、しかも最後の最後迄観て、しっかりジワリと驚かせてもらったし。
犯人探しの話じゃなく、あくまで作家という創作者を軸に定めての暗中模索ドラマ。
悍ましい"過去の現実と虚構の狭間にもがき苦しむ"〜そのスパイラルな構造に、観る側は入り込んで楽しめるか否か…って作品かも知れない。



バスバスっ(或いはブスブスっ)とハサミで⁉︎次々と刺し殺めてしまうシーンでバックに流れる玉手箱風なポップス🎵の効果狙い…は、ワタシゃ頭では解るが、個人的には"あんまりな狙い"は好みじゃないんだナ。

あと、主人公作家が(ストーリーに絡む)或る女性のライヴパフォーマンスに行った際、一人離れた部屋でレコーダーを聴くシーンだけが劇中全編から"浮いていて"安直。
バックの動く現代アート?話に対しても邪魔だし、アート自体もダサ過ぎて辟易だと思う。本ドラマにスペーシーな空間なんて要らないだろうがっ💢(あんな作品使うのは義理か何かしらあるんだろうナ〜)

そう…浮かせて生きてくるシーンもあれば、唯お粗末に浮いてしまう場合もある。
逆に暗喩的に鎮めて(或いは沈めて)おいて、その時は判りにくくても、終わってみれば底辺や傷口からジワジワ効いてくる(生きてくる)シーンもあろうと思う訳だ。

そんな理由からかな、ワタシはこのドラマで主人公の分かり易過ぎな表情や上記の様な安直シーンを減らし、その代わりに静物や景色を使って謂わばシンボル&メタファー効果を増やせば、もっと重厚な作品と成ったのではないかナと感じた。

過去を表す褪せたカラフルな画面と明るめな音楽を背景にした狂気の沙汰…
それと現代、つまり聴き書きしている作家の周囲や行動…
その二極の対比に於いて。
先に述べた主人公そのものを出さない(風や自然音効果での)暗喩画面が何故無かったのか… その辺りが残念でならないんだナ。
何故なら、お話はかなり面白いスパイラル構造で楽しめたから。 



役者配役やロケ地等のチョイスは天晴れなレベルだったし。

あと最後に2つ付け加えとかなきゃならんのは…一つ、個性的なフランス女優らの脱ぎっぷりだナ。
彼女らの演技にもBravo!大袈裟でなくリアルな卑猥さが非常に良かった。

二つ目はオープニングやエンディングや合間に挟むテロップやの写植ロゴ色等は、やはり御フランスのセンスじゃの。
何回も回想みたいな絵で幼い頃の主人公が朝食を食べるシーンに注目だ。
題から蝶ばかりを視ていてはいけない。食べているカラフルなシリアルのイメージは、実は写植や美術や全編にさり気なく散りばめられていたりするから。
観終えてワタシは、そのカラフルさが黒い翅の蝶のイメージと決して対極なのではなく一対の組み合わせなのだと思った。
そして、ずっとずっとキッチンに鎮座していた…それがこの或るパワフルさを保った作品を創る上での、髄なるイメージカラー(或いは色彩)だったと感じられたりした。


きっといずれハリウッドに、ストーリーのプロット掬いで必ずや盗まれると思う。
例えば…個人的に一押しなアルゼンチンとスペイン合作映画"瞳の奥の秘密"をハリウッドがリメイクした"シークレット・アイズ"みたいに、有名俳優使ってサ。もっと判り易くてワザとらしい関係性なんか充てがってサ。
そんで結局は安っぽくなっちゃうんだよネ…
だから本作はコレはコレでいいのかも知れないナ〜

それにしても…或る怖さの濃いぃ作品だった。
カミさんも"夢に出てきそうだわ"ってブツブツ言ってたしナ(⌒-⌒; )
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