小川勝広

三体の小川勝広のレビュー・感想・評価

三体(2023年製作のドラマ)
3.7
Catcher in the EARTH
やってくれないの?

または、
宇宙で私をつかまえて。

どういう事?

冒頭の文革のシーン、
残酷ではあるがあっさりしている。
原作であった噎せ返るような、
血生臭さ、汗臭さはない。

のように、
原作とはちがう描写、設定の違い、
もあるがおもしろさは残っている。

原作のおもしろさは、
映画でいうと、
『コンタクト』や『インターステラー』とはちがう、
フィジカル、メンタルの傷み哀しみLOVEベースで、
SFが展開されている独特の世界観が楽しい。
(セーガン、ノーランの世界観も素晴らしいのは言うまでもない)

NOVEL →ラテン語で【新しい】という意味。

ノベルは小説という意味ではなく、本来は【新説】という訳が、
適しているというのが私見。

そういう意味で、
本作がとんでもない新説を、
読んでいる気持ちにさせてくれたのは、

各シークエンスは、
『幼年期の終わり』等で、
見たことがあるLORDのような、
エピソードが多いが、
使い古されたパーツを並べ替えて、
まとめて、
Catcher in the EARTH
または、
宇宙で私をつかまえて、
を大胆に文革から、
ひとつひとつ、
何が起きるのかわからない体で、
進めていって、
まるで【新説】のような、
マジックを展開していたからだろう。

今と昔をシーンバックしながら、
進めないとイケナイ理由も充分に理解できるが、
あのワクワクが一般的なSF映画のカテゴリーに、
分類されると少しさびしい気もする。

歌舞伎町がちらっと出てくるシークエンス、
涙が出る・・・

ビダン ビダン ビドゥビドゥビダン・・・

【蛇足】
原作を映像化するにあたって、
エンターテイメント色を濃くしようとすると、
史強を活躍させざるを得ない。

その史強のキャラクターが、
原作では鬼軍曹的なプロの刑事のような強いイメージだった。

本作では、
腹の出た、笑顔の多い、
柔和なキャラを前面に出していた。

他の登場人物の取捨選択、
バランスの取り方、
小ネタでの捌き方、
あたりまえだけど技術が高い。
が、
ダイジェスト版になるのはしょうがないが、
8話に渡る予告編に過ぎない、
カウントダウンの描写があまりに安易すぎた。

おそらく、
このシーズン1の評判に関係してくるだろうが、
シーズン2で終了、
長くても3程度の想定での、
グランドビジョンからの逆算だろう。

この規格外の原作をまともにドラマ化しようとすれば、
8話×6、シーズン6程度の分量が必要だろう。

ライバルは映画やドラマを越えて、
スポーツ、バラエティ等々の、
バーリトゥードの2024年、
そんな現実を見渡すと、
ドラマ化としては【最適解】なのかもしれない。