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三体のmのネタバレレビュー・内容・結末

三体(2023年製作のドラマ)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

配信開始日に全話一気見。

原作は未読なのに、ここ数ヶ月で原作に激ハマりした親友が読みながら事細かく詳細なネタバレを興奮しながら教えてきてくれる為(笑)、もはや読んでいるのと変わらない状態になってしまった。なのでそんな原作をある程度知っているポジションからの感想です。

面白かった・・!スピード感と人物描写の面白み・深みと話のまとめ方が段違いの驚異的な脚色術!これ本当に凄い事をしている。
そこに演出・演技の良さが見事に合わさり、5話までは文句無しの素晴らしい出来だと思う。原作に忠実という一点だけで本国ドラマ版(テンセント版)を推す人が多そうだけど、映像作品としてはこちらの方が段違いに上。
特に「少年の君」「ソウルメイト」のデレク・ツァン監督がテンセント版ではできない怒りと実感を強く刻み込んだ1・2話が本当に良い。やはり文化大革命で父親を殺された一人の女性の怒りが起点となる物語なのだから、そこをしっかりと描いてくれるのは物語の作者の精神に何より忠実だと思う。ちなみにこの部分が中国で炎上して原作バッシングが起きているそうです。え、刊行時はスルーして今更?遅くないか?

原作Ⅲを踏まえて考案されたオックスフォード・ファイブという主人公グループ、そこに本来は巡り合うことの無い原作Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの主人公達をまとめて存在させて同時代感を出して、ここから想像を越える長い年月を跨いでいく事になる物語に一本通った軸を作った事は素晴らしい脚色だ。凄い構成力。クリエイター陣の度胸と知力と読解力・理解力の賜物だね・・
正直人間的な魅力の乏しかった原作の主人公を、個性があり人間臭い親しみの持てる人物像に変えたのも良い。
原作は女性の描き方に難があったのを改善できているのも今回の映像化の大きな美点だと思う。

古筝作戦の描き方には見た目の残酷さ以上に『子供が大勢乗っていて犠牲になる・主人公が切断された子供の足を目撃する』というかなりデカいアレンジが加えられていて、この事がきちんと重しになっている。

なんで古筝作戦を三体人は止めなかったのかというのを原作Ⅱ冒頭の「あなた達が怖い」と言われる交信シーンをその前に持ってくる事で矛盾を無くす等、原作のわずかなツッコミ所を補っていく細かい変更も巧み。

主人公達もまたイギリスでは移民であり、それ故に三体人と重なっていく部分もあるのも見事な改変。ほんと巧いね。

原作で『美少女』と書かれていた役を拡張して作られたタチアナは良い存在となって作品に貢献しているし、VRゲーム内の守るべき存在として出てくる子供の存在をああいう風に使ってくるのも見事です。


エイザ・ゴンザレスらお馴染みの俳優陣も皆良かったけど、中でも原作Ⅲの主人公に当たるジン・チェン役のジェス・ホンと若い頃の葉文潔役のザイン・ツェンが素晴らしかった!


ここからは良くなかった点。

原作Ⅰの話を5話まででほぼ語り尽くし(凄まじいまとめの手腕。何しろテンセント版は原作Ⅰを全て映像化するのに30話使っている)、6〜8話は原作Ⅱ・Ⅲそれぞれの前半をミックスして並行して描いていく。6話以降は正直かなり失速するし、何より原作Ⅱの面壁計画の面白さが伝わりづらくなってるのは勿体無い。何しろ原作Ⅱの面壁計画と原作Ⅲの星群計画・階梯計画の三つが同時並行で描かれていくのでどうしても足早になるし、それも仕方ないといえばそうなのだけど・・


ソフォンのビジュアルがちょっとアニメチックすぎるのはある(ソフォン=智子なので日本刀を背負っていて日系の俳優が演じているのはまぁ分かると言えば分かるけど)。てかダサい。

主人公達の人物像や関係性を強化した結果、原作一番の美味しいキャラである史強(ダー・シー)の存在感が薄まっているのもちょっと残念。演じるベネディクト・ウォンは魅力的で良かったのだけど。


終盤は色々気になる所もあったけど、次のシーズンも是非作って最後まで映像化してほしい。しかし次こそビジュアルや世界観がとんでもない事になるから、果たしてどうなる事か・・
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