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三体のcamusonのレビュー・感想・評価

三体(2023年製作のドラマ)
2.5
まず最初に気付く原作との違いは、主人公の中国人科学者が、オックスフォード大学出身の若手研究者・エグゼキュティブの5人組(ラテン系白人女1、アジア系女1、白人男2、黒人男1)に置き換えられていることです。登場人物の多様性の確保と、若い視聴者層の取り込みが狙いでしょうかね(実際は他の役も含めたキャラの再構築だが序盤では明かされない)。

結果、地球連合による対宇宙人一大プロジェクトの要職を、一国、一大学、一学年の仲良しグループ複数人が担うという、非現実的で、かつ、多様性からは最もかけ離れた、あまりに卑近で矮小な世界の話になっているところが、何とも皮肉です。

原作にあったサスペンス要素、ホラー要素を推進力にすれば、ぐいぐい引き込まれてもおかしくないはずなのですが、ただでさえ登場人物が多いところ、序盤の主人公が5人組になったことで、キャラクターが薄味になってしまい、感情移入が困難となり、話が分散してしまって、没入感が得られないと感じました。

科学者らしくない人が一人くらいいたとしても、受け入れる寛容さは持ち合わせているつもりですが、5人全員が科学者らしい知性や風格が感じられないとなると、作品の厳かな雰囲気は吹き飛んでしまいます。

原作からどれだけ変更したとしても、非現実的だとしても、面白ければ一向にかまわないのですが、これが、不思議なことにまったく面白くないのですよね。科学者同士の何気ない会話のやり取りとかに、知的な気のきいたものなどがあればよかったのですが、そういうものもほとんど感じられなくて。

ただでさえ、尺が足りなくて、原作のネタバレダイジェストになってしまっていますが、合間合間で、原作にはない、仲良し5人組の男女に関わる話なんかが挟まってきて、各話1時間弱がとてつもなく長く、苦痛な時間に感じられてしまいました。

期待が大きかった手前、見始めてしまった手前、
義務感で何とか見終えることができました。

映像技術自体はクオリティが高く、それなりにお金と手間をかけて、きちんとつくられてると思います。とはいえ、SF部分の映像化は一番期待する部分なわけで、結果的には、追加されたオリジナル人間模様に尺を奪われて、食い足りない感じがしてしまいました。

例えばVRの世界についても、未知の天体を舞台にした謎の天体運行の解明をテーマにした知的で洒落の利いた文明構築ゲームとしてのワクワク感は、あまり感じられないのですよね。ヘッドマウントディスプレイをかぶって、ゲームをプレイした時に人が感じる没入感や感動、ちょっとした疲労感を再現するくらいには、じっくり尺を取って魅せて欲しかったなと。

スエズ運河のプロジェクトについても、地球人の命運のかかった一大作戦なわけですから、それなりの緊張感や高揚感が感じられるような演出を期待してしまいます。映像技術が素晴らしいだけに、ちょっともったいない感じですね。
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