ねまる

三体のねまるのレビュー・感想・評価

三体(2023年製作のドラマ)
4.4
配信を心待ちにしていた作品。そして観終わった今は、早くシーズン2が観たいと思っている。
本屋さんにあるこのタイトルを目にしてきたし、しかも原作をドラマ化で成功させたGOT脚本家コンビ。
原作は未読だけど、今のロンドンと1980年代の中国を行き来しながら、高速で広がり進んでいく物語にあっという間に夢中になった。

科学者の仲間たち5人組(オックスフォードファイブ)が、それぞれの立場から、三体問題に向き合うというのも面白い。ここは原作からの改変ポイントだったらしいけど、私もまるでそのメンバーになった気持ちで難しいテーマに入り込めた。ハマっていくほどに原作も読みたくなる。

科学とそれゆえに生まれる犠牲。
ジンとウェイドに共感して、戦うために邁進することに大義を感じていたけど、
オギーに「その結果広島が起きた」と言われた時の心のダメージは息が止まるほどのものだった。私はこの視点じゃなきゃいけなかったんだ。
私の頭は追いついてなかった。思考が足りなかった。
何度も思い知らされる。

彼らの戦いとは全然違うベクトルで、内なる戦いに挑むウィルのストーリーライン。
アレックス・シャープのSFドラマで見るレベルではない驚異的な演技で、彼の決断に心が揺さぶられる。
このドラマがSFとして「展開」を主とするものなら、こんなにハマらなかったかもしれない。ジンとウィルの関係性にこそ、壮大なSFが深淵を帯びる。

-----ネタバレ-----

このドラマの鍵は3つのボタンのシーン。
①イェ・ウェンジェが三体にメッセージを送る送信ボタン
=宇宙からの襲来を描くSFであること
この物語の始まりである行為でもあるし、彼女がどうしてこの行動を起こしたのかが、これまで描かれていたのだと理解する場面でもある。

②オギーがナノ繊維を使用するボタン
=脅威に立ち向かう科学者たちの物語であること
何故オギーの目にカウントダウンが映ったのか、彼女の凄さが分かる一方で、戦うものの巨大さと、それ故に払わなければいけない代償をの巨大さを知る衝撃的な場面である。

③ウィルが安楽死を選ぶ5回のyes
=友情や恋を描いた人間ドラマであること
1000人の死のシーンより、たった1人の死の方が心を揺さぶることがある。オックスフォードファイブはこのためのドラマの改変なんだと思う。

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ジンほどの大事な役を、アレックス・シャープが何人かと読み合わせをして、ジェスしかいない、と決めたそうで、彼らの相性が最優先だったとか。
ジンにとって「大荒れの海の中で、守ってくれる島のような存在」であり、それが愛であると認めたことが、最終回の絶望になってるから、実はこちらがメインストーリーで、他のSF設定が周囲のものだったのかも。だとしたら、これは今まで観たことのない、愛の物語だ。

シーズン2決定嬉しい〜、是非完結までドラマを続けて欲しい。原作読んじゃおうかなー
ねまる

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