シガーandシュガー

刑事シンクレア シャーウッドの事件のシガーandシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

元炭鉱町ノッティンガムシャー。
そこでは、かつての炭鉱ストで生まれた住民の間にある亀裂は深く、未だにストを起こした労働者とストを破って働いたものとは憎み合っている。
そんな町で、労働者の中でも有名な老人が殺される。警視正シンクレアは、事件が過去の労働争議に関係するのではないかと考える。シンクレア自身、40年前のストでは心に大きな傷を負っていた。
そんな中、ロンドンから助っ人刑事が派遣されてくる。彼も40年前、この町での事件に深く関わり、またシンクレアとも因縁があった。

主人公のシンクレアをはじめ、労働争議に関わった老人たちが過去のストと事件に強くこだわっていることが、連続殺傷事件とは実はほとんど無関係であったということは、とても示唆に富んでいて良かった。
若い世代はもはやストのことなど関係なく新しい世界を生き始めていることをハッキリと示しており、老人たちはそのことに気づかなかった。
昔の労働争議、つまり「自分たち」のことにばかり、いつまでもいつまでも意識を向けていた老人たち(主人公シンクレアも含む)が、やっと前を向き始めるラストは胸をうつ。
特に、息子を犯罪者にしてしまったとっても頼りない父親が、ラストでは自らの愚かさを悔い、スト破りをまだ攻める相手に対してハッキリと言い返し、遅ればせながら息子と向き合おうとする姿は印象深い。

途中に含まれたアンディおじさんの事件はスト事件のミスリードにはなっておらず独立して見るものだけれど(ドラマの前フリにも”2つの事件”と書いてある)、こちらはこちらで悲惨なので気持ちがしょんぼりしてしまった。
アンディおじさんの役者(アディール・アクタル)がしんどい演技をしてくれる。つらい。上手い。

ちなみにシンクレアの妻役のジョアン・フロガットはイギリスドラマでよく見る女優だけれど、強気の女性を演じさせるとうまい。今回のわけあり女性の山場の演技も、話し合いや言い訳ではなく夫を攻撃して自分を守るスタンスが全面に出ていてイラっとさせられた。こちらも上手い。

日本でも「スト破り」は実に重く迫害されたことがあると、夫がぽつりと言っていた。私の亡父も言っていたことをぼんやりと思い出す。私はよく知らないけれど、そう昔のことではないはずなのに日本では忘れられている。