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根の深い木~世宗大王の誓い~のruublueのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

根の深い木 世宗大王の誓い
視聴期間 2019年秋〜冬 24話

チャンヒョク目当で見始めたら、王イ・ド(後の世で有名な世宗大王となる) を演じるハン・ソッキュの演技の巧さに引き込まれたドラマ。自分の治世で世を良い方に変えようとする王の苦悩を演ずるハン・ソッキュ。喜怒哀楽全ての表情を一つのシーンに表現する様な緻密な演技に脱帽しながら全話。

李氏朝鮮時代の中でもひときわ斬新な発想を持った王イ・ド。ハン・ソッキュの演技は演者側から見た冷静な視点で王イ・ドを演じながら、イ・ドの生涯に深く迫り、追体験しているかのように見える。迫真の演技ながら役に囚われず、役と彼自身の視点を同時に感じさせる様なバランス感覚が清々しく好感をもった。


(物語) 王が善政によって民を導こうとするかどうかは奸臣にとっては関係の無い事だ。実質の政権は家臣の手にあり、王とは名ばかりで世を掌握する権限を剥奪されている。また中国の藩属国の代表者という重責。時には身内からも命を狙われる事も運命付けられた人生を歩んだ事が描かれている。

王宮内の掟や家臣にとって都合の良い因習に抑圧され、自国の状況掌握を遮断される孤独な王。王を操ろうとする家臣ら。

操られるのは王ばかりでは無く、話し言葉以外、文字を持たない民衆も同様だった。民は自ら考える事に気力が及ばないまま労働の日々を生きる者として描かれる。

闇の権力が絶大な影響力を持つのは古今東西の習いなのか。両班(ヤンバン)と呼ばれる貴族、特権階級が政治の中枢を握り、国の発展への弊害をもたらす様が描かれる。


王は幼い頃から聡明で書物を読む事を好んだとされる。複雑な魔法陣を組み上げる少年期のシーンが印象的に描かれています。青年期には優秀な儒生を育てる機関、集賢殿(チッペンジョン)を創立し、老練な家臣と若き学者を共存させる事で、親である先王イ・バンウォンの武力の治世を脱して勉学で立身出来る治世への転換を図ろうと試みた。


このドラマの背骨であるハングル文字創生(訓民正音)は古来からの因習に挑戦する王の生涯をかけた戦略だった。敵対側となる多勢の両班に表立って逆らう向きを取らず、民衆の潜在能力を底上げする為のハングル文字の流布という良性の胞子を与える方策を生み出した。


韓ドラ時代劇の中で度々登場する書簡には達筆な漢字が使われていて、ハングル文字はいつの時代から使われ始めたのか知る由が無かったのですが、このドラマでハングルを編み出すに至った王の歩みを知る事が出来ました。


民と国の未来を想う王とそれを広める忠臣の心が一つとなって行く様や敵対勢力のせめぎ合いのバランスが重厚に語られる見応え有る作品でした。
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