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ザ・グローリー ~輝かしき復讐~ パート 2のrayconteのレビュー・感想・評価

5.0
これが終わった時にわかったことは、これは復讐ではなく再生の物語だったということだ。

キムドンウンは学生の頃に受けた過酷ないじめと、それによって未来を破壊されたことの罰を与えるため、人生をかけて復讐に乗り出す。
だが、ドンウンが20年かけて準備してきたのは自分で手を下す文字通りの仕返しではない。彼女はただ、標的が勝手に自爆していく環境を整えただけだ。
実際、彼らが痛い目に遭ってる間にはドンウンはただ見ているだけ。
個々の強い自己愛のために繋がっているだけの彼らは、自己保身に走り、協力すべき仲間さえなじり、互いを破壊していく。
潔いほどに醜い彼らは、何のイレギュラーも起こさず簡単に落下していく。
ただ正直、あまりにも標的たちがドンウンの思い通りになっていくので、シナリオとしてはご都合主義な感じが否めない。
いじめ加害者のパクヨンジンは本当に親の金と人脈に頼るしか能がなく、いざ追い込まれてもひたすら他力本願で喚くだけ。
計算高くもなく、叩けばバンバン埃が出るから復讐相手としてはあまりにイージー。
唯一この復讐を台無しに出来そうな人間はヨンジンの夫だが、なぜか彼は妻よりも優先するほどの謎の正義感を持っていて簡単にヨンジンを見放してくれる。
万事がこのような感じで、計画と呼ぶにはあまりに確実性のないドンウンの仕掛けがなぜだか全部うまくいってしまう。
復讐劇としては、あまり巧みな筋書きだとは言えない。

けれど、最終話でそんな思いは覆された。
復讐はこのドラマの目的ではなくて、この作品は理不尽に人生を奪われた人々が、人生を取り戻していく話だったのだ。
パクヨンジンから「私のおかげであなたはここまで頑張れたんじゃない」と、物語の核心を突く言葉が出てくる。
ドンウンは彼女への復讐をあの時誓わなければ、あのまま屋上から飛び降りていただろう。
でもヨンジンがいたから、あの頃と変わらず他人への思いやりなどない完璧な悪人なままでいてくれたから、ドンウンは長く険しい年月を走り続けてこられたのだ。

私はドンウンのような人にこそ、このドラマを見てほしいと思う。
学校でのいじめだけでなく、虐待や貧困や差別など、理不尽に人生を歪めるものはたくさんある。
18歳のドンウンのように、屋上から飛び降りようと考えている人もいるだろう。
でもドンウンは、多分幸せになった。
それは復讐が完了したからではなく、目標に向かって走る過程で出会った人たちに自身の幸せを見出せたからだ。
長い未来を想像したくないなら、あと一年、次の季節まで、明日まででもいい。
幸せな家庭を築きたいとか、冬になったら新しいコートを買いたいとか、明日配信されるドラマを見たいとか、そんなことでいい。
それがどんなものだろうとそれであと少し生きてみようと思えるなら、それは理不尽に自分を歪めたトラウマへの復讐だ。
そうやって人生を繋いで、19歳を迎えられる日が来たなら、それこそが栄光の時なのだと思う。
誰かが凍えるのはその人のせいではなく、厳しい冬のせいだ。
だから、死ぬのは春にしよう。
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