【続編、あるやなしや】
面白かった。
最後の、白井三郎のダイブの場面と、そこで流れる音楽は、アニメのルパン三世シリーズを彷彿とさせる。
江戸川乱歩は「怪人二十面相」を生み出してもいるのだから、ルパン三世へのオマージュとか、そんな粋な演出じゃないのかと思った。
この江戸川乱歩誕生秘話の物語は、様々に配置された伏線で一見複雑になりそうだと思わせておいて、終盤一気に、それらが集約的に回収されるところも良かった。
息を潜める悪党は悪党らしく、そして、翻弄されるものたちも、犠牲になるものも、対峙するものも、人物像が印象的に描かれているほか、隆子が支えようとするのも良かった。
この物語云々は別にして、隆子は乱歩の妻になる人だ。
それに最終話のセリフも秀逸だ。
「あの時ああしていれば、こんな道をえらばなけりゃ、そんなことばっかりだ。誰かの望み通りに生きるなんで出来ない。いろんな色が混じりあって、いろんな音ができる......。他人の色を塗りつぶす奴は嫌いだ......たった一人にしかない物語を自分自身の言葉で描け。そしたら、そいつは救われるかもしれない」 ⇒ 失敗なんで当たり前。人はそれぞれ違うんだから、後悔なんか後回しにしても前に進む方が良いのだ。
「分からない。だから知りたい」 ⇒ 人間こうでなくちゃと思う。
「顔を隠して、そうやって世界を斜めから見て笑っていたら傷つくことはないし、他者の物語をちつでも操れるなんて悦に入ってるでしょ。誰かに求められていないと生きていると実感できないんだな。それなら操られているのはあんたの方じゃないか。自分がないから他人の生きるさまを借りないと生きられない寂しい人だ」 ⇒ サブ垢や捨て垢駆使のネット民やネトウヨになって、誹謗中傷やらインチキな書き込みして目立っても悲しいだけだ。
「名探偵ってのは、困っている人がいたら手を差し伸べる。一人ひとりの苦労に寄り添いながら助ける。どれだけ頑張っても救いきれないかもしれない。それでも、たった一人にしかない物語を守るために」 ⇒ 途中の回で「優しい人は悲しい人」なんてセリフもあったが、そんなことは決してない。そして、ボランティアもそうだけど、何か社会を改善しようとする行動や発言をネットで偽善だとか騒ぎ立てるやつがたくさんいる。そんなクズに向けた言葉でもある。
「生まれてきた意味なんてない。生きているだけで十分」 ⇒ 自分の人生は自分で見出していかなくちゃいけないってことなんだろう。
そんな風に思う。
イベルガンの卵の指輪を着けた人物の登場で、続編もあるのかと思わせるが、どうでしょうか。
もしかしたら、それは想像に任せるとのメッセージかもしれない。